デイサービスの送迎がきついと感じる人は少なくありません。送迎は、利用者を自宅まで迎えに行き、サービスが終わったあとに自宅へ送り届ける業務ですが、実際の現場ではただ車を運転するだけの業務ではないからです。
利用者を安全に車へ乗せること、時間を意識してルートを回ること、車内で利用者の様子に気を配ること、家族と必要なやり取りをすることも送迎に含まれます。そのため、運転が得意ではない人だけでなく、普段の運転に不安がない人でも、利用者を乗せる送迎には負担を感じることがあります。
この記事では、デイサービスの送迎がなぜきついと感じられやすいのか、そしてその負担が本人だけの問題なのか、職場環境にも関係するのかを現場目線で見ていきます。
デイサービスの送迎業務とは
デイサービスの送迎業務とは、利用者を自宅まで迎えに行き、サービス終了後に自宅へ送り届ける仕事です。デイサービスは利用者が自宅から事業所へ通うサービスなので、送迎は一日の中で欠かせない業務になります。
ここでは、送迎業務の細かい内容をすべて説明するのではなく、この記事の前提として、デイサービスにおける送迎がどのような位置づけの業務なのかを見ていきます。
送迎業務の詳しい内容はこちらの記事で紹介しています

デイサービスは送迎で始まり送迎で終わる
デイサービスの一日は、朝の送迎から始まります。利用者の自宅を回って事業所までお連れし、その日のサービスが始まります。
サービスが終われば、夕方に利用者を自宅まで送り届けます。つまり送迎は、デイサービスの一日の始まりと終わりに関わる業務です。
もちろん、事業所によって送迎の担当者は違います。介護職員が運転する職場もあれば、送迎専門の職員がいる職場もありますが、どの形であっても、デイサービスでは送迎そのものを切り離して考えることは難しいです。
送迎は運転だけで終わる仕事ではない
送迎と聞くと、車を運転する仕事という印象を持つかもしれません。たしかに運転は送迎業務の中心ですが、現場での送迎はそれだけで終わるものではありません。
利用者の乗り降りに介助や見守りが必要になることもありますし、送迎時に家族と利用者の状態についてやり取りする場面もあります。
つまり、デイサービスの送迎には、運転以外にも多くの役割が含まれています。だからこそ、送迎はデイサービスの仕事の中でも負担を感じやすい業務になります。
送迎は運転そのものに負担がある
送迎がきつい理由として、まず考えたいのは車を運転すること自体の負担です。デイサービスの送迎は運転だけで終わる仕事ではありませんが、そもそも仕事として車を運転することに不安やプレッシャーを感じる人もいます。
普段から運転に慣れている人でも、仕事として会社の車を運転するとなると、いつもとは違う緊張感があります。さらに送迎では高齢の利用者を乗せるため、運転そのものの負担に、利用者への配慮も重なります。
仕事として車を運転することに不安を感じる人もいる
車の運転は、誰にとっても同じように楽なものではありません。運転が得意な人もいれば、狭い道や交通量の多い道、駐車が苦手な人もいます。
デイサービスの送迎では、決まった時間の中で利用者宅を回る必要があります。初めて行く家や慣れない道では、道順や標識、停車場所、交通ルールにも注意しなければなりません。
また、仕事中の運転である以上、「少しくらいならいい」という感覚では動けません。安全確認をしながら、利用者宅へ確実に向かい、事業所まで戻る必要があります。こうした業務としての運転そのものが、送迎をきついと感じる理由になります。
実際にあった送迎のミスと現場のリスク
交通ルール・駐車・近隣トラブル
進入禁止時間の見落としや、駐車許可の確認不足などで違反になるケースもあります。本来は会社側の管理も必要な部分ですが、小規模事業所ではそこが曖昧になりやすく、現場に負担がかかることもあります。
利用者を乗せることでさらに気を使う
送迎では、安全運転だけでなく、利用者が車内で安心して過ごせるように運転することも求められます。自分一人で運転するときとは違い、車内には支援が必要な高齢の利用者が乗っているからです。
利用者の中には、体幹が弱く、車の揺れで姿勢が崩れやすい人もいます。腰や膝に痛みがある人、車に乗るだけで疲れやすい人、揺れに不安を感じる人もいます。
そのため、送迎では急発進、急ブレーキ、急なカーブなどにも気を配る必要があります。ただ目的地まで運転するのではなく、利用者の身体や状態に合わせた運転が必要になるところに、送迎特有の負担があります。
送迎は時間に追われやすい
デイサービスの送迎では、安全に運転することだけでなく、時間を意識して動くことも求められます。朝の迎えが遅れれば、その後のサービス全体に影響しますし、帰りの送りが遅れれば、家族の予定に影響することもあります。
ただし、時間に追われているからといって、急いで危ない運転をするわけにはいきません。この「遅れられないけれど、急げない」という状況が、送迎の大きな負担になります。
朝の遅れは一日の流れに影響する
朝の送迎は、デイサービスの一日の始まりに関わります。利用者の到着が遅れると、その後の入浴、食事、レクリエーション、機能訓練などの流れに影響することがあります。
もちろん、少し遅れたからといってすべてが崩れるわけではありません。ただ、複数の利用者を順番に迎えに行く中で一人ひとりの到着がずれていくと、事業所に戻る時間も遅くなります。
送迎担当としては、時間どおりに回りたい気持ちがあります。しかし、利用者の準備に時間がかかったり、道路が混んでいたり、予定どおりに進まないこともあります。そうした中で、時間と安全の両方を意識しなければならないところに、送迎の難しさがあります。
実際にあった送迎のミスと現場のリスク
ルートミスや時間ズレによるクレーム
曜日によって利用者が変わるため、毎日同じルートではありません。そのため、忙しい中で道順を間違えてしまい、時間が遅れるといった凡ミスも起こります。それがそのままクレームにつながることもあります。
遅れられないけれど急げない難しさがある
送迎では、時間に遅れないことが大切です。特に帰りの送迎では、家族が帰宅時間に合わせて予定を組んでいることもあります。家族が仕事や外出の予定を調整している場合、到着が大きく遅れると迷惑をかけてしまうことがあります。
ただ、送迎は予定どおりに進むとは限りません。信号、渋滞、工事、事故、天候、利用者の乗り降りにかかる時間など、自分ではどうにもできない要素もあります。
それでも、遅れを取り戻すために危ない運転をするわけにはいきません。時間を意識しながらも安全運転を外せないところに、送迎担当の負担があります。
乗降介助や利用者対応も負担になる
デイサービスの送迎では、車を運転している時間だけが負担になるわけではありません。利用者が車に乗る前、車から降りたあとにも、転倒やふらつきに注意しながら対応する必要があります。
特に、歩行が不安定な利用者や、立ち上がりに介助が必要な利用者の場合、送迎時の負担は大きくなります。送迎は「車で送り迎えをする仕事」と見られやすいですが、実際には車の外での介助や見守りも含まれます。
車に乗る前後にも転倒リスクがある
利用者を送迎するときは、自宅の玄関から車までの移動、車への乗り降り、車から玄関までの移動にも気を配る必要があります。車に乗っている時間よりも、乗る前後の方が緊張する場面もあります。
足が上がりにくい利用者、車内で身体の向きを変えにくい利用者、玄関の段差でふらつきやすい利用者もいます。雨の日は足元が滑りやすくなりますし、坂道や砂利道、狭い玄関、手すりのない場所ではさらに注意が必要です。
送迎担当は、利用者を車に乗せれば終わりではありません。自宅から安全に車へ乗ってもらい、帰りも安全に自宅まで送り届けるところまでが送迎です。そのため、運転だけでなく、乗降介助や移動時の見守りも大きな負担になります。
認知症の利用者対応では運転中も気を抜けない
認知症の利用者を送迎する場合は、車内での動きにも注意が必要です。走行中にシートベルトを外そうとしたり、身を乗り出したり、ドアを開けようとしたりすることがあります。
認知症があるからといって、車のドアを開けられないわけではありません。僕の経験ですが、走行中に利用者がドアを開けようとしたことがありました。
すぐに気づいて停車できたため大きな事故にはなりませんでしたが、送迎では運転だけに集中していればよいわけではありません。チャイルドロックの確認や座席の位置、車内での様子に気を配る必要があります。
すべての危険を完全に防ぐことは簡単ではありません。それでも送迎担当は、道路状況だけでなく、車内の利用者の様子にも意識を向けなければなりません。この緊張感も、デイサービスの送迎がきついと感じられやすい理由の一つです。
家族や近隣との関わりも負担になる
デイサービスの送迎では、利用者だけでなく、家族や近隣の人と関わる場面もあります。送迎担当は利用者の自宅へ直接行くため、事業所の中で働いているだけでは見えにくい負担を感じることがあります。
家族とは必要な情報を聞いたり、その日の様子を簡単に伝えたりする大切な場面ですが、送迎担当が直接対応しなければならないこともあります。
送迎時に家族から不満を受けることがある
送迎では、到着時間や車の停め方、玄関先での対応などがきっかけで、家族から不満を受けることがあります。送迎担当としては安全に回っているつもりでも、家族には「遅い」「早すぎる」「車を停める場所が気になる」と感じられることもあります。
また、送迎担当が言われるのは、送迎そのものへの不満だけとは限りません。着替えのしまい方、荷物の入れ方、事業所内での対応など、送迎担当本人が直接関わっていない内容をその場で言われることもあります。
送迎担当は、家族と直接顔を合わせる立場です。そのため、家族からすると、事業所への不満や気になることを伝えやすい相手になることがあります。内容によっては生活相談員や管理者に引き継ぐ必要があり、その場で受け止めること自体が負担になることもあります。
送迎担当が事業所の顔になる場面もある
送迎担当は、利用者を送り迎えするだけでなく、家族から見ると事業所の職員として対応する立場になります。そのため、言葉遣いや表情、車の停め方、玄関先での対応なども、事業所全体の印象につながることがあります。
近隣への配慮も必要です。自宅前に車を停めるときには、通行の邪魔にならないか、長く停めすぎていないか、他の車が通れるかなどを気にしなければなりません。道幅が狭い地域では、車を停める場所一つにも神経を使います。
一方で、送迎では家族から直接感謝の言葉をもらえることもあります。「いつもありがとうございます」「助かっています」と言われる場面は、送迎担当だからこそ感じられる部分です。ただ、それでも送迎が利用者、家族、近隣との関わりを含む業務である以上、運転以外の気疲れがあることは事実です。
送迎のきつさは本人の能力だけでは決まらない
デイサービスの送迎がきついかどうかは、本人の運転技術や性格だけで決まるものではありません。どの車を運転するのか、どの利用者を担当するのか、どのくらい介助が必要なのかによって、送迎の負担は大きく変わります。
同じように送迎へ出ていても、軽自動車で乗り降りが安定している利用者を送る場合と、福祉車両で身体介助が必要な利用者を送る場合では、職員の感じる負担は違います。送迎がきついと感じる背景には、本人の得意不得意だけではなく、担当する送迎の中身も関係しています。
車種や利用者の状態によって負担は変わる
送迎の負担は、車の大きさだけで決まるわけではありません。ただ、大きめの車や福祉車両を使う送迎では、運転のしづらさに加えて、利用者の乗り降りに介助が必要になることがあります。
福祉車両を使う利用者は、普通の車への乗り降りが難しかったり、足腰が弱かったり、移動時にふらつきやすかったりする場合があります。そのため、送迎担当は車を安全に運転するだけでなく、乗降時の身体介助にも気を配る必要があります。
つまり、送迎の負担は「何回送迎に出たか」だけでは見えません。どの車を使ったのか、どの利用者を担当したのか、乗降介助がどの程度必要だったのかによって、職員にかかる負担は変わります。
送迎できる職員に負担が偏ることもある
職場によっては、送迎できる職員が限られていることがあります。軽自動車なら運転できても、大きめの車は怖いと感じる職員もいますし、土地勘や運転経験によって担当できる範囲が変わることもあります。
その結果、大きめの車や福祉車両を運転できる職員に、特定の送迎が偏りやすくなることがあります。しかも福祉車両を使う利用者は、乗降時に身体介助が必要になることもあるため、その職員に「運転の負担」と「介助の負担」が重なりやすくなります。
このような偏りがあると、送迎回数だけを見ても本当の負担は分かりません。本人が運転に慣れているから大丈夫、という話ではなく、職場の中で負担がどのように分かれているのかを見る必要があります。
送迎がきつくなりやすい職場環境
デイサービスの送迎は、職場の体制によって負担の大きさが変わります。本人がどれだけ気をつけていても、ルートや時間設定に無理があったり、情報共有が不十分だったりすると、送迎は一気にきつくなります。
送迎が苦手な職員だけが大変なのではなく、職場の仕組みそのものが送迎の負担を大きくしている場合もあります。ここでは、送迎がきつくなりやすい職場環境について見ていきます。
ルートや時間設定に余裕がない
送迎ルートや時間設定に余裕がない職場では、少しの遅れが大きな負担になります。利用者の準備に時間がかかったり、乗り降りに時間がかかったりすると、次の利用者の迎えや送りに影響してしまいます。
もちろん、送迎ではある程度の時間管理が必要です。ただ、最初からぎりぎりの時間でルートが組まれていると、職員の努力だけではどうにもならない場面が出てきます。
そのような状況では、送迎担当は常に時間に追われることになります。それでも安全運転を外すことはできないため、精神的な負担が大きくなります。
情報共有やトラブル対応の仕組みが弱い
送迎では、予定変更や臨時利用などの情報共有も重要です。家族から「今日は早めに迎えに来てほしい」と連絡があっても、その情報が送迎担当に正しく伝わっていなければ、ミスにつながります。
送迎中に家族から不満を受けたり、近隣から指摘を受けたりすることもあります。そのときに、送迎担当だけが抱え込む形になると負担は大きくなります。
本来であれば、必要に応じて生活相談員や管理者が入り、職場全体で対応する必要があります。情報共有やトラブル対応の仕組みが弱い職場では、送迎担当が一人で背負う場面が増え、送迎そのものがさらにきつく感じられます。
練習や同乗期間がないまま任される
送迎は、免許を持っていればすぐに一人でできる仕事とは限りません。普段の運転に慣れていても、高齢の利用者を乗せて送迎するとなると、道順、利用者ごとの注意点、家族対応、車内での見守りなど、覚えることが多くあります。
それにもかかわらず、十分な練習や同乗期間がないまま一人で送迎を任されると、不安が強くなるのは当然です。特に、狭い道や駐車しにくい場所、乗降介助が必要な利用者を担当する場合は、事前に確認しておきたいことが多くあります。
送迎がきつくなるかどうかは、本人の慣れだけではありません。最初にどれだけ同乗できるか、利用者情報を共有してもらえるか、不安を相談できるかによって、職員の負担は大きく変わります。
実際にあった送迎のミスと現場のリスク
記録漏れによる減算リスク
送迎は実施した記録を残さなければ減算対象になりますが、介護職員は運転手という意識が薄く、慣れないうちは記録を忘れてしまうことがあります。実際に僕のいた事業所でも、記録漏れで減算になったケースがありました。
送迎がきついときは負担を分けて考える
デイサービスの送迎がきついと感じたときは、まず何が一番負担になっているのかを分けて考えることが大切です。送迎がつらいといっても、運転そのものが不安なのか、利用者を乗せる責任が重いのか、時間に追われることが苦手なのかによって、考えるべきことは変わります。
たとえば、狭い道や大きめの車の運転が不安な場合と、家族対応やクレームを受けることが負担になっている場合では、必要な対応は同じではありません。認知症の利用者対応が不安な人もいれば、送迎ルートや時間設定に無理があることで疲れている人もいます。
もし送迎そのものに強い不安があるなら、担当する車やルート、送迎回数について相談できるかを考える必要があります。一方で、送迎が苦手というより、職場の情報共有やトラブル対応の弱さが原因になっている場合は、自分の努力だけで解決しようとしても限界があります。
大切なのは、「送迎がきつい」という感覚をひとまとめにしないことです。何が一番負担なのかを分けて考えることで、自分が送迎そのものに強い苦手意識があるのか、それとも今の職場の送迎体制が合っていないのかが見えやすくなります。
デイサービスの送迎がきついなら職場環境も見直していい
デイサービスの送迎がきついと感じることは、甘えではありません。送迎には、運転のプレッシャー、時間管理、乗降介助、利用者対応、家族とのやり取りなど、さまざまな負担が重なります。
送迎が苦手だからといって、すぐにデイサービスに向いていないと決めつける必要はありません。同じデイサービスでも、送迎の負担は職場によって大きく変わります。
送迎専門の職員がいる職場もあります。運転手と介護職員が分業されている職場もあります。送迎ルートや時間設定に余裕があり、変更があっても情報共有される職場もあります。
反対に、送迎できる職員に負担が偏っていたり、トラブル対応を現場任せにしていたり、練習期間がないまま一人で送迎を任されたりする職場では、送迎の負担は大きくなりやすいです。
送迎がきついと感じたときは、自分だけの問題として抱え込まず、今の職場の体制も含めて見直していいと思います。デイサービスの仕事自体は好きでも、送迎体制が合わないことで負担が大きくなっている場合もあります。
無理を続けることだけを正解にせず、自分が安心して送迎に関われる環境かどうかを考えることも、デイサービスで長く働いていくためには大切です。
