デイサービスというと、利用者がゲームをしたり、体操をしたり、みんなで歌を歌ったりする姿を思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。こうしたレクリエーションは、多くのデイサービスで日常的に行われています。
一見すると、利用者に楽しい時間を過ごしてもらうための活動に見えるかもしれません。もちろん楽しんでもらうことも大切ですが、デイサービスでレクリエーションを行う意味はそれだけではありません。
体を動かす、頭を使う、人と交流するなど、レクリエーションにはさまざまな役割があります。そして利用者が長い時間を過ごすデイサービスでは、そのレクリエーションの過ごし方が事業所そのものの印象にもつながります。
僕は介護業界で15年間働き、デイサービスでは介護職員から相談員、管理者まで経験してきました。この記事では、実際の現場で行ってきたレクリエーションを交えながら、その目的や役割、種類、現場で大切になる考え方まで解説します。
デイサービスのレクリエーションとは
デイサービスのレクリエーションというと、ゲームなどを思い浮かべる人もいるでしょう。しかし実際には活動の幅は広く、楽しみながら身体や頭を使い、人と関わるなど、心身の状態を保つためにも大切な活動です。

ゲームだけがレクリエーションではない
レクリエーションと聞くと、風船バレーやゲームなどを思い浮かべるかもしれません。しかし、デイサービスで行われるレクリエーションは、それだけではありません。
体を動かす活動もあれば、クイズやしりとりのように頭を使うもの、塗り絵や制作のように手先を使うものもあります。歌を歌ったり、利用者同士で一緒に取り組んだりすることもあります。
そのため、デイサービスのレクリエーションは「みんなでゲームをする時間」と考えるより、利用者が楽しみながらさまざまな活動に取り組む時間と考えた方が、実際の姿に近いでしょう。
デイサービスでは心身の状態を保つ活動として行われる
一般的にレクリエーションという言葉には、娯楽や余暇活動といった意味があります。しかし、介護サービスであるデイサービスでは、ただ楽しい時間を過ごしてもらえばいいというものではありません。
デイサービスでは、楽しみながら身体や頭を使い、人と関わる機会を作ることもレクリエーションの大切な役割です。ただ遊んでいるように見える時間にも、利用者の心身の状態を保つための活動として意味があります。
デイサービスでレクリエーションを行う目的と役割
レクリエーションは、内容によって目的や役割が変わります。そして、事業所が考えている目的と利用者が参加する理由も同じとは限りません。この両方を考えることが、デイサービスのレクリエーションを理解するうえで大切です。

レクリエーションによって身体や頭を使う機会を作る
デイサービスのレクリエーションには、身体を動かすものもあれば、頭や手先を使うものもあります。何をするかによって違いはありますが、それぞれの活動が身体機能や認知機能に働きかける機会になります。
大切なのは、すべてのレクリエーションに同じ目的を求めることではありません。身体を動かす、頭を使う、手先を使うなど、それぞれの特徴を生かしながら活動することが、心身の状態を保つことにつながります。
人と一緒に過ごすことも大切な役割
デイサービスには、ほかの利用者や職員と一緒に過ごせるという特徴があります。複数人で行うレクリエーションでは、同じ活動に参加する中で自然と会話したり、笑ったりする機会も生まれます。
一人でできる活動でも、同じ場所でほかの利用者と取り組めば会話につながることがあります。身体や頭を使うだけでなく、人と関わる機会を作ることもレクリエーションの大切な役割です。
利用者にとっては「楽しむこと」が参加する理由になる
事業所側には、身体機能や認知機能、社会的交流などの目的があります。しかし、利用者が「認知機能を維持するためにクイズをしよう」と考えて、レクリエーションに参加しているとは限りません。
利用者からすれば、「楽しそうだからやってみたい」「みんなと一緒にやりたい」といった気持ちが参加する理由になります。どれだけ意味のある活動を用意しても、参加してもらえなければレクリエーションとして成立しません。
だからこそ、利用者が楽しめることも大切です。楽しむために参加し、その中で自然と身体や頭を使い、人とも交流する。その結果が、事業所側が考えているレクリエーションの目的にもつながっていきます。
レクリエーションはデイサービスで過ごす大きな時間を占める
デイサービスでは入浴や食事、体操などさまざまなサービスが行われています。その中でも、利用者一人が一日をどう過ごしているかという視点で見ると、レクリエーションに使っている時間はかなり大きなものになります。

利用者から見るとレクリエーションの時間は長い
デイサービスでは入浴などに長い時間を使いますが、一人の利用者が何時間も入浴しているわけではありません。事業所全体のスケジュールと、利用者一人が実際に過ごしている時間は分けて考える必要があります。
一般的な一日型のデイサービスで利用者一人の過ごし方を見ると、レクリエーションなどの活動をしている時間はかなり長くなります。僕が働いていたデイサービスでも、一日の中で大きな割合を占めていました。
レクリエーションがデイサービスへ通う楽しみにもなる
一日の中でレクリエーションの時間が長ければ、その時間をどう感じるかはデイサービスそのものの印象にもつながります。毎回つまらないと感じていれば、「デイサービスに行っても楽しくない」と思っても不思議ではありません。
反対に、好きな活動があったり、みんなで楽しく過ごせたりすれば、それを楽しみに通う利用者もいます。「今日は何をするのかな」という楽しみが、デイサービスへ行く理由の一つになることもあります。
だから僕は、レクリエーションを一日の予定の一つとして軽く考えるものではないと思っています。利用者が「また行きたい」と思えるかどうかにも関わる、デイサービスの中でも存在感の大きな仕事です。
通い続けてもらうことは在宅生活を支えることにもつながる
デイサービスへ通い続けることは、利用者が自宅で生活を続けていくための支えにもなります。本人が活動したり人と交流したりする機会になるだけでなく、利用している時間は家族が介護から離れられる時間にもなります。
レクリエーションが通う楽しみになれば、デイサービスを継続して利用することにもつながります。レクリエーションそのものが在宅生活を支えるわけではありませんが、利用を続けるきっかけになることも大切な役割の一つです。
デイサービスで行われるレクリエーションの種類
デイサービスのレクリエーションには、身体を動かすものから、頭や手先を使うものまでさまざまな種類があります。事業所によって行う内容は違いますが、実際の現場で行われているレクリエーションをいくつか見ていきましょう。

身体を動かすレクリエーション
身体を動かすレクリエーションでは、風船バレーやタオルを使ったゲーム、ペットボトルを使ったボウリングなどがあります。座ったまま参加できるものも多く、利用者の状態に合わせながら行います。
僕が働いていたデイサービスでは、特に風船バレーをよく行っていました。風船ならボールよりも動きがゆっくりで、利用者も手を伸ばしたり身体を動かしたりしながら参加できます。
もちろん、身体の動かし方や参加できる範囲は利用者によって違います。全員に同じ動きを求めるのではなく、それぞれが参加できる形を考えながら行うことも大切です。

頭や手先を使うレクリエーション
クイズやなぞなぞ、しりとり、パズルなど、頭を使って楽しめるレクリエーションもあります。身体を大きく動かすことが難しい利用者でも、内容によっては一緒に参加できます。
塗り絵やちぎり絵、季節に合わせた制作など、手先を使う活動もデイサービスではよく行われます。完成した作品を飾ったり持ち帰ったりできることも、ゲームとは違った楽しみの一つです。
身体を動かすレクリエーションだけでは、参加しにくい利用者もいます。いくつかの種類を組み合わせることで、利用者の身体状況や好みに合わせて活動の幅を広げることができます。

歌や調理など楽しみ方にも幅がある
みんなで歌を歌ったり、おやつを作ったりすることもレクリエーションになります。ゲームのように勝ち負けがあるものだけがレクリエーションではなく、利用者が一緒に楽しめる活動にはさまざまな形があります。
何を楽しめるかも人によって違います。身体を動かすことが好きな人もいれば、制作に集中することが好きな人、歌うことを楽しみにしている人もいます。
そして、室内で行うものだけがレクリエーションではありません。散歩など外へ出て行う活動もあり、室内で行うゲームや制作とは違った楽しみ方や身体を動かす機会を作れるのも、外出レクリエーションの特徴です。
外出レクリエーションには室内レクとは違う良さがある
デイサービスでは、散歩など外へ出て行うレクリエーションもあります。歩くことで自然と身体を動かせるだけでなく、外の空気や季節を感じられるなど、室内で行うレクリエーションとは違った良さがあります。

散歩は外出レクリエーションの代表的な活動
外出レクリエーションというと特別な企画を想像するかもしれませんが、日常的に行いやすいのは散歩です。近くを歩いたり、公園まで出かけたりするだけでも、利用者にとっては立派な活動になります。
散歩の大きな特徴は、楽しみながら自然と歩けることです。外へ出れば一定の距離を歩くため、身体を動かす時間もしっかり作れます。お花見などのイベントとは違い、日々の活動として取り入れやすいことも散歩の良さです。
外へ出ることを楽しみにしている利用者もいる
室内で過ごすことを好む利用者がいる一方で、外出を楽しみにしている利用者も多くいます。僕が働いていたデイサービスでも、「今日は散歩に行かないの?」と聞かれることがあるくらい、外へ出ることを楽しみにしている人がいました。
外へ出れば季節や景色が変わり、それ自体が楽しみになることもあります。室内のレクリエーションにはあまり参加したがらなくても、散歩なら参加する利用者もいるなど、外へ出ることそのものを楽しめるのも外出レクリエーションの良さです。
外出できなかった時期に利用者の変化を感じた
僕が働いていたデイサービスでは外出レクリエーションをよく行っていて、利用者もかなり歩いていました。しかし、コロナ禍で外出する機会がなくなり、その後に散歩を再開したとき、以前との違いを強く感じました。
以前なら歩けていた距離で疲れてしまうなど、利用者の体力が落ちているように感じたからです。その時期には平均介護度も上がり、認知面でも以前とは違うと感じる利用者がいました。
もちろん、外出しなかったことだけが原因だったとは言い切れません。年齢による変化などが重なった可能性もあります。それでも、日常的に外へ出て歩いていた時間がどれだけ大きかったのかを、僕自身が改めて考えるきっかけになりました。
定番になるレクリエーションには理由がある
デイサービスでは新しいレクリエーションを取り入れる一方で、何度も繰り返し行う定番のレクリエーションもあります。利用者が参加しやすく、楽しめることはもちろん、事業所の規模や利用者層に合っていることも定番になる理由です。

多くの利用者が参加しやすいことが大切
デイサービスには、比較的元気な人から身体を動かすことが難しい人まで、さまざまな利用者がいます。そのため、一部の人しか参加できないものより、多くの利用者が参加しやすいレクリエーションの方が定番になりやすいです。
その日の利用者を見ながら、できるだけ多くの人が「やってみよう」と思えることも大切です。参加しやすく、繰り返しても楽しめるものは、自然とその事業所の定番になっていきます。
利用者が楽しめて職員も進行しやすいものは続きやすい
定番になるレクリエーションは、多くの利用者が参加しやすいだけでなく、繰り返しても楽しんでもらえることが大切です。利用者から「またやりたい」と思ってもらえるものだからこそ、何度も行うレクリエーションとして残っていきます。
さらに、準備や進行が複雑すぎず、職員が無理なく続けられることも大切です。利用者が楽しめて職員も進行しやすい。その両方を満たすものだからこそ、定番のレクリエーションになっていきます。
僕が働いていたデイサービスでは風船バレーが定番だった
僕が働いていたデイサービスでは、風船バレーが定番のレクリエーションでした。座ったままでも参加しやすく、風船が飛んでくれば自然と手を伸ばすので、多くの利用者が一緒に参加できました。
風船はボールより動きがゆっくりなので、利用者同士で打ち返しながら長く続くこともあります。誰かがうまく打ち返したり、思わぬ方向へ飛んだりすると笑いも起こり、自然と場が盛り上がっていました。
もちろん、風船バレーがすべてのデイサービスに合うわけではありません。利用者の人数や状態、事業所の広さなどによっても変わります。その事業所に合っていて、繰り返し楽しめるものが定番になっていくのだと思います。
レクリエーションでは参加しやすさと安全への配慮も必要
デイサービスには身体機能や認知機能、好みの違う利用者が集まります。そのため、全員が同じように楽しめるとは限りません。できるだけ多くの人が参加できる工夫と、事故を防ぐための安全への配慮が必要です。

全員が同じように楽しめるとは限らない
デイサービスには、比較的身体を動かせる人もいれば、立ち上がることが難しい人もいます。認知機能や理解力、好みにも違いがあるため、同じレクリエーションを全員が同じように楽しめるとは限りません。
簡単すぎれば物足りないと感じる人がいる一方で、難しくすれば参加できない人も出てきます。さまざまな利用者が一緒に楽しめる内容を考えることも、レクリエーションの難しいところです。
夢中になるからこそ安全への配慮も必要
身体を動かすレクリエーションでは、楽しさだけでなく安全にも気を配らなくてはいけません。普段は問題なく参加できる利用者でも、楽しくなって夢中になると、いつも以上に身体を動かして思わぬ事故につながることがあります。
レクリエーションが盛り上がることは良いことですが、利用者が夢中になっているときほど職員は目を配る必要があります。利用者に楽しんでもらいながら、安全に進めることもレクリエーションを行う職員の大切な仕事です。
レクリエーションを大変だと感じる理由は一つではない
さまざまな利用者が参加できる内容を考えながら、安全にも気を配ることは簡単ではありません。さらに、レクリエーションを担当すること自体に苦手意識を持つ職員もいます。
ただ、職員がレクリエーションを大変だと感じる原因が、すべてレクリエーションそのものにあるとは限りません。職員自身の苦手意識だけでなく、事業所の取り組み方によって負担が大きくなっている場合もあります。
レクリエーションが大変になる理由はどこにあるのか、負担を軽くするにはどう考えればいいのかは、こちらの記事で詳しく解説しています。

レクリエーションにはデイサービスの特色が表れる
レクリエーションの内容は、どのデイサービスでも同じではありません。外出に力を入れているところもあれば、運動や制作などを多く取り入れているところもあり、何をして過ごすかには事業所ごとの特色が表れます。

何をして過ごすかは事業所によって違う
デイサービスで行われるレクリエーションは事業所によって違います。散歩や外出を多く行うところもあれば、身体を動かすレクリエーションや制作などを中心にしているところもあります。
どのような利用者が通っているのか、その人たちにどのように一日を過ごしてもらいたいのかによっても、行うレクリエーションは変わります。レクリエーションには、その事業所の考え方や特色が表れます。
レクリエーションがデイサービスを選ぶ理由になることもある
利用者によって、好きなレクリエーションは違います。外へ出ることが好きな人もいれば、制作を楽しみたい人、身体を動かすことが好きな人もいます。
僕がデイサービスで働いていたときも、ケアマネジャーから「この利用者は外出が好きだから」と、外出をよく行っていることを理由に紹介してもらうことがありました。
入浴や食事などのサービスだけでなく、どのようなレクリエーションを行っているのかもデイサービスを選ぶ材料になります。レクリエーションの特色が、利用者とデイサービスをつなぐこともあります。
レクリエーションはデイサービスの質にも関わる大切な仕事
レクリエーションは、一日の予定を埋めるために行うものではありません。利用者にとっては、楽しみながら身体や頭を使い、人と交流する大切な活動です。どのようなレクリエーションを行うかは、デイサービスで過ごす時間の充実にも関わってきます。
利用者に楽しんでもらいながら、身体や頭を使う機会や人と交流する機会を作ることは、デイサービスで働く職員の大切な仕事です。だからこそ、レクリエーションはデイサービスの質にも関わるものだと僕は思っています。
まとめ|デイサービスのレクリエーションはただの遊びではない

デイサービスのレクリエーションには、身体や頭を使う、人と交流する、楽しみながら一日を過ごすなど、さまざまな役割があります。利用者にとって長い時間を占めるからこそ、デイサービスそのものの印象にも関わる大切な仕事です。
もちろん、大切な仕事だからといって堅く考える必要はありません。職員も利用者と一緒に笑ったり、楽しんだりしていい仕事です。ただ、その時間には利用者の心身の状態や、デイサービスへ通う楽しみを支える役割もあります。
だから僕は、デイサービスのレクリエーションを利用者と「遊ぶだけの仕事」だとは思っていません。レクリエーションは、利用者に楽しんでもらいながら心身の状態を保ち、その人らしい一日を支える大切な仕事だと思っています。


