デイサービスの面接というと、面接室に入って「これから面接を始めます」と言われてから、「それではこれで終わります」と言われるまでの時間をイメージする人が多いと思います。
しかし実際の採用現場では、面接室の中だけを見ているわけではありません。事業所の前に来た時の様子、入口での挨拶、最初に対応した職員への受け答え、帰る時の振る舞いまで含めて、その人の印象として残ることがあります。
デイサービスは、利用者やご家族、現場職員との関わりが多い仕事です。だからこそ、用意した受け答えの上手さだけではなく、普段の気配りや人との接し方が見られやすい職場でもあります。
僕自身、デイサービスの現場や管理者、採用担当として面接に関わってきましたが、面接で評価されるのは質問に対しての受け答えだけではありません。事業所の前に来た時から、事業所を出るまでの立ち回り全体が、印象に関わっていると考えた方がいいです。
面接は席に座る前から始まっている
面接は、面接室に通されてから始まるものだと思われがちです。しかしデイサービスの面接では、事業所の前に着いた時点ですでに見られていることがあります。
面接本番の時間は、応募者もどうしても身構えます。事前に質問を想定し、受け答えもある程度準備していくので、ある意味では一番「作れる時間」でもあります。
一方で、面接の前後は油断が出やすいです。まだ始まっていないと思っていたり、終わった安心感で気が抜けたりするからです。しかし採用する側からすると、その何気ない場面の方が、その人の素に近い部分が見えやすいことがあります。
面接室の中でどれだけ丁寧に話していても、事業所に入る前後の態度が雑だと印象は変わります。だからこそ、面接当日は「事業所の前に来た時から面接は始まっている」と考えておくことが大切です。
事業所の前と入口で見られていること
建物の前や入口付近では、まだ面接官と向き合っていない分、軽く考えてしまう人もいます。しかし実際には、建物の前や入口付近での立ち振る舞いから、その人の常識や気配りが見えることがあります。
建物の外から到着の様子を見られていることがある
僕自身、面接の時間が近づくと、建物の2階から見える角の道まで目を配り、応募者が来る様子を確認していたことがあります。これは遅刻しないかを見るためだけではありません。どんな雰囲気で来る人なのかが、自然と目に入るからです。
歩きスマホをしている、何かを食べながら来る、だらしない歩き方をしている。そういった姿が見えると、やはり印象は下がります。面接室に入ってから丁寧に話していても、最初に受けた印象は意外と残るものです。
応募者からすると、まだ建物の外なので面接前のつもりかもしれません。しかし採用する側には、事業所へ向かっている姿がすでに見えていることもあります。事業所が近づいた段階から、立ち居振る舞いを意識しておいた方がいいです。
入口付近での挨拶は印象に残りやすい
面接で事業所を訪れたとき、入口付近にいる人が誰なのか分からないことはよくあります。職員かもしれませんし、外部の営業の方かもしれません。利用者のご家族ということもあります。
相手が事業所の関係者か分からないからこそ、感じよく会釈する、自然に挨拶をする。そうした基本的な対応ができるかどうかを、採用する側も見ていることがあります。
デイサービスでは、ご家族との関わりも仕事の一部です。面接の時点ではまだ職員でなくても、採用後に送迎などで顔を合わせることがあります。採用する側は入口付近での対応から、働き始めたあとも周囲に気を配れる人かどうかを考えています。
入口付近での挨拶は、決して大げさなことではありません。しかし、相手が誰か分からない場面での小さな対応も、面接ではその人を判断する材料になることがあります。
中に入った直後の対応で第一印象は決まりやすい
事業所の中に入ってから、最初に対応する職員への受け答えはとても重要です。ここでの印象は、そのまま「一緒に働きたい人かどうか」の判断材料になりやすいからです。
最初に対応した職員への態度も見られている
受付や案内をしてくれた職員に対して、どんな話し方をするか。ここでぶっきらぼうだったり、緊張を理由に表情が硬すぎたりすると、それだけで印象は下がります。
逆に、にこやかに自然な受け答えができる人は、それだけで印象が良くなります。デイサービスでは、利用者家族にも職員にも、日常的に声をかけながら仕事を進めます。最初の受け答えで、その人のコミュニケーションの土台が見えることもあります。
面接官の前だけ丁寧にしても、最初に接した職員への態度が雑だと意味がありません。入口を入った瞬間から、もう見られていると思っておいた方がいいです。
現場職員も実質的な面接官になっている
僕は面接が終わった後、現場職員に「今日の面接の人、どうだった?」と印象を確認していました。採用したら、その人は現場の職員と一緒に働くことになります。だから現場職員がどう感じたかは、とても大きいです。
採用を最終的に決めるのは管理者や面接官かもしれません。しかし現場職員の印象も、判断材料になります。現場が「この人なら一緒に働きやすそう」と感じるかどうかは、採用する側から見ても大事です。
つまり、面接担当者だけが面接官ではありません。現場職員も、実質的には面接官の一員だという意識を持っておくことが大切です。
履物の扱いも現場職員の印象に残る
現場職員が応募者と接する時間は、入口での案内や挨拶などのわずかな時間です。だからこそ、靴を脱いだときの所作や、その後に置かれた履物も、応募者を判断する大切な材料になります。
靴を脱ぎ捨てたままにするのか、向きを直して揃えるのか。極端に汚れた靴で来ていないか。こうした部分は職員の目に自然と入り、「丁寧な人だな」「少し雑な人かもしれない」と印象づけられることがあります。
履物だけで本当の人柄が決まるわけではありません。しかし、現場職員が応募者を見られる時間は限られています。その限られた情報の中では、靴の扱いも人柄や気配りを判断する一つの材料になります。
面接室へ入る前の所作だからと軽く考えず、履物まで丁寧に扱うことが大切です。
面接中は模範解答より自然な会話力が大事
面接対策というと、よくある質問に対する答えを準備することばかり考えがちです。しかしデイサービスの面接では、それ以上に自然な会話ができるかどうかが重要です。
アイスブレイクで素の受け答えが出る
実際の面接では、最初の質問がいきなり自己紹介とは限りません。その前に軽い雑談が入ることがあります。いわゆるアイスブレイクです。
たとえば「道に迷いませんでしたか」「外は暑かったでしょう。クーラーを強めますか」といったやり取りです。これは緊張をほぐすための会話ですが、同時に素の反応が出やすい場面でもあります。
ここはまだ本番ではないと思って油断しやすいですが、アイスブレイクでの受け答えの方が印象に残ることがあります。
感謝の言葉が自然に出る人は印象がいい
たとえば「クーラー強めますか」と聞かれた時、「お願いします」でも「あ、大丈夫です」でも、それ自体はどちらでもいいです。大事なのは、その後にどんな言葉が続くかです。
「すみません、クーラー強めていただけますか。お気遣いありがとうございます」と自然に言える人は、やはり印象がいいです。デイサービスの現場では、相手の行為に対して素直に感謝を返せることが、とても大切だからです。
僕自身、このあたりは採用の判断にも影響していました。面接が本格的に始まる前の場面で、自然に気遣いと感謝が出る人は、現場でも周囲に気を配れる可能性が高いと感じるからです。
暗記した答えより自分の言葉で話す方が伝わる
面接中も同じです。Webサイトに載っている模範解答のような受け答えは、一見きれいでも不自然になりやすいです。会話のテンポが悪くなったり、相手の言葉に反応している感じが薄くなったりします。
デイサービスで大事なのは、正解を言うことより、相手の目を見て自然に会話ができることです。利用者との関わりでも、ご家族対応でも、その場に応じたやり取りが求められます。
だから面接でも、答えを暗記してはめ込むより、自分の言葉で話した方が伝わります。その方が予想外の質問にも対応しやすく、結果的にコミュニケーション力も伝わりやすくなります。

逆質問と面接後の雑談でも働く気持ちは伝わる
面接の終盤や終了後は、もう終わった気持ちになって気が抜けやすい場面です。しかし、ここでも働く意欲や気の回り方は十分に伝わります。
「特にありません」で終わるのはもったいない
「何か聞いておきたいことはありますか」と聞かれた時に、「大丈夫です」と終えてしまう人は意外といます。何でもやるつもりだから聞かない、という感覚かもしれません。
ただ、採用する側からすると、少し物足りなく感じることがあります。本当にここで働きたいなら、気になることが一つもないとは考えにくいからです。
もちろん、好印象を与えるために無理に難しい質問を考える必要はありません。気になっていることがあれば、遠慮せずに聞けばいいだけです。
それでも質問が思い浮かばない場合は、働く意欲が伝わるような前向きな質問を一つ用意しておいた方がいいでしょう。
働く姿が見える質問は印象に残りやすい
僕が面接をしていた時、求人票には「車通勤可」と記載していました。すると、ある応募者から「もし採用された場合、自転車で通勤することはできますか」と聞かれたことがあります。
その人は、自転車の方が短い時間で通えるものの、自転車通勤ができるか分からなかったため、面接には公共交通機関を使って来ていました。事業所に自転車が一台も止まっていなかったことから、自転車通勤はできないのかもしれないと思い、確認したそうです。
この質問が印象に残ったのは、自転車通勤について聞かれたからではありません。求人票の内容と実際に見た事業所の様子から、自分がこの事業所へ通って働く場合を具体的に考えていたことが伝わったからです。
採用する側は、採用を伝えれば必ず入職してくれるとは考えていません。だからこそ、その職場で実際に働く自分を想定した質問が出ると、「面接で話を聞いたうえでも、ここで働きたいと思っている」と感じられ、強く印象に残ります。
面接後の雑談でも現場への関心は伝わる
面接が終わった後に、少し雑談になることがあります。この場面でも、仕事に関する自然な話ができると印象は良くなります。
たとえば「送迎車は冬はスタッドレスに履き替えるんですか」「夏はフロア内も結構暑くなるんですか」といった話です。面接でわざわざ聞くほどではなくても、働くイメージを持っているからこそ出る話があります。
また、「本日は面接ありがとうございました」と最後にきちんと伝えることも大切です。面接を受けて、その会社に前向きな気持ちを持ったことが、最後の言葉からも自然に伝わります。
出口まで気を抜かない人は印象に残る
面接は、面接室を出たら終わりではありません。事業所を出た後も、職員から見える範囲にいる間は、その振る舞いが目に入ることがあります。事業所側から見える範囲に入った時から、見えなくなるまでが面接だと思っておいた方がいいです。
現場職員への最後の一言を忘れない
面接室を出た後、近くに現場職員がいたなら、「お邪魔しました」「ありがとうございました」と一言かけておくことは大切です。小さなことですが、面接官だけでなく、現場職員にも最後まで感じよく対応できる人だという印象につながります。
こうした一言は、普段の人との関わり方にも表れます。利用者やご家族、職員同士のやり取りでも、相手にきちんと言葉を返せることは大切です。
面接官への挨拶だけで終わらせず、面接室を出た後に会う現場職員にも、丁寧に挨拶をして帰りましょう。
事業所から見えなくなるまでを面接と考える
事業所を出る時も、ただ背中を向けて立ち去るのではなく、事業所側を向いて一礼してから帰るくらいの気持ちは持っておいた方がいいです。
面接前は緊張していても、面接室を出るとほっとして気が緩みやすくなります。その時に雑な振る舞いが出てしまうと、面接中に残した良い印象が崩れることもあります。
面接は、面接室の中だけで完結するものではありません。事業所側から見える範囲に入った時から、見えなくなるまでを一つの流れとして考え、最後まで丁寧に振る舞うことが大切です。
面接当日の立ち回りは普段の振る舞いから始まっている
ここまで書いてきたことは、特別な面接テクニックではありません。大きな力が必要なことでもなく、少し意識すれば誰にでもできることがほとんどです。
ただ、その少しの差が面接では大きな差になります。挨拶や感謝を言葉にすること、相手に合わせて丁寧に振る舞うことは、デイサービスで利用者やご家族、職員と関わる上でも大切な力です。
面接当日だけ取り繕おうとしても、細かな場面では普段の振る舞いが出ます。普段から挨拶や感謝、所作の丁寧さを意識しておけば、面接でも無理をすることなく自然に行動できます。
デイサービスの面接では、質問への答えだけを頑張ればよいわけではありません。面接室の内外で交わす挨拶や職員への接し方、帰る時の一言まで含めて、応募者がどのように人と関わるのかを見られています。
普段から丁寧な関わりを心がけ、その姿勢を面接でも最後まで崩さないこと。それが、デイサービスの面接で採用につながる大きなポイントです。
