デイサービスの面接で採用されるためには、何か特別なテクニックが必要だと考える人もいるかもしれません。しかし実際には、採用されるために特別なテクニックが必要なわけではありません。
むしろ大事なのは、自分の良さを最大限にアピールすることよりも、基本をしっかり押さえ、評価を下げるような部分を作らないことです。
僕はこれまで介護職、管理者、採用担当として面接に関わってきましたが、受け答えをしっかり準備していても、基本的な部分で評価を落としてしまう人はいました。
一般的な面接対策では、自分の良さや意欲を伝え、採用側にアピールする方法へ意識が向きやすくなります。もちろん、それ自体が間違っているわけではありません。
ただし、デイサービスの面接で採用側が見ているのは、「ほかの応募者よりすごい人か」ということよりも、「この人なら安心して働いてもらえそうか」という点です。だからこそ、デイサービスの面接では、まず基本を外さないことが何より大切です。
この記事では、デイサービスの面接でまず押さえておきたい基本戦略と、よく聞かれる質問を整理していきます。細かなテクニックを覚える前に、まずは面接全体の考え方をつかんでください。そこが分かるだけで、準備の仕方も受け答えの仕方もかなり変わります。
デイサービスの面接は基本を外さなければ採用に近づく
デイサービスの面接は、他の応募者よりも優秀だと思ってもらうことより、「この人なら安心して現場に入ってもらえそうか」を見られる場です。そこを理解しておくと、必要以上に気負わずに準備しやすくなります。
大事なのはプラス評価よりマイナスを作らないこと
面接というと、好印象を積み上げて採用を勝ち取るものだと思われがちです。もちろん印象が良いに越したことはありませんが、デイサービスの面接ではそれ以上に「この人は大丈夫そうか」が見られています。
というのも、デイサービスの求人は急ぎの欠員補充で出ていることも多いからです。つまり採用する側は、最初から「できれば採りたい」と思って面接していることが多いのです。
だからこそ、変に目立つことよりも、遅刻しない、挨拶ができる、話が通じる、感じが悪くない、そういった最低限を外さないことの方がよほど重要になります。
一般的な面接対策がそのまま当てはまらない理由
一般企業の就活では、ライバルの中で自分をどう優秀に見せるかが重視される場面もあります。しかしデイサービスの面接は、そこまで勝負色が強いとは限りません。
介護の現場は人手が足りず、とにかく「長く働いてくれそうな人」「現場で揉めなさそうな人」を求めていることが多いからです。また、介護職全体の面接対策が、そのままデイサービスにも当てはまるとは限りません。
デイサービスにはデイサービスならではの働き方があり、面接で見られるポイントも少し違います。特に送迎や家族対応があるため、コミュニケーションの印象はかなり重く見られます。
欠員補充の採用では、「普通」ができる人は強い
15年面接に関わってきて思うのは、本当に「普通」ができている人は強いということです。逆に言えば、普通に見えても遅刻をする、言い訳をする、受け答えが雑、そういう人も実際にいました。
僕が採用に関わり始めた十数年前は、特にその傾向が強く、遅刻してきたのにヘラヘラと理由を話す人も珍しくありませんでした。さすがに今では、そのような応募者を見かけることはほとんどなくなりました。
しかし、当時はそうした人も珍しくなかったため、時間を守り、最低限の準備をして真面目に面接に来るだけでも、十分に好印象を持つことがありました。
面接前の準備で印象はかなり決まる
面接は、面接室で話し始めてから始まるわけではありません。服装や持ち物、訪問時間まで含めて、すでに見られています。ここは難しい部分ではないので、確実に押さえておきたいところです。
服装は迷ったらスーツで行くのが無難
服装は清潔感があれば絶対にダメというわけではありません。ただ、印象がいいのはやはりスーツです。少なくとも、スーツで行ってマイナスになることはまずありません。
介護の面接では、採用されやすい業界だという認識からか、十分な準備をせずに面接へ来る人もいます。採用側は、服装や受け答えから、面接を軽く考えているような印象を受ける場面を何度も経験しています。
だからこそ、スーツで来るだけでも、面接にきちんと向き合っている人だという印象につながります。
事前に「スーツでなくても大丈夫ですよ」と言われているなら別ですが、確認していないのであれば、迷ったらスーツで行った方が安全です。わざわざ博打を打って私服で行く必要はありません。
持ち物は最低限そろえておく
履歴書は当然として、できれば職務経歴書、筆記用具、A4用紙が入るカバン、クリアファイルまで準備しておくと安心です。企業側から何か資料を渡されることもありますし、その場でメモを取る姿勢も印象に関わります。
履歴書や職務経歴書は、ただ用意すればいいものではありません。書類の整え方で印象が変わる部分については、こちらで詳しく解説しています。

到着は5分から10分前がちょうどいい
遅刻がダメなのは当然ですが、早すぎてもよくありません。理想は5分から10分前です。デイサービスでは、管理者が現場の合間に面接をしていることも珍しくないので、早く着きすぎると逆に相手の段取りを崩すことがあります。
だから「早ければいい」ではなく、ちょうどいい時間に着くことが大事です。そのためにも、住所や電話番号をすぐ確認できるようにしておき、時間が確認できる時計やスマホを必ず持っておきましょう。
面接官が見ているのはこの3つ
デイサービスの面接で見ているポイントは、細かく挙げればいろいろあります。そのなかでも、まずは次の3つを押さえておきましょう。この3つを理解しておくと、質問への向き合い方もかなり変わります。
清潔感があるか
まず見ているのは、第一印象です。もっと分かりやすく言えば、清潔感があるかどうかです。デイサービスは利用者だけでなく家族と接する仕事でもあるので、見た目の印象はかなり大事です。
服装そのものだけではなく、髪型や靴、全体の雰囲気も含まれます。大きなことではありませんが、その小さな積み重ねで「感じがいい人だな」「雑な人だな」はかなり変わります。
相手の話を聞き、自然に受け答えできるか
2つ目はコミュニケーション力です。デイサービスは、利用者や家族、職員同士など、多くの人と関わりながら働くため、面接でも受け答えの様子はよく見られています。
相手の目を見て話せるか。話をきちんと聞いてから返せるか。こちらの言葉を途中で遮らないか。聞き返すときの言い方が雑ではないか。採用側は、こうした何気ない受け答えから、その人のコミュニケーションの取り方を見ています。
長く働いてくれそうか
3つ目は、辞めずに続けてくれそうかどうかです。採用する側からすると、ここはかなり重要です。せっかく採用してもすぐ辞められてしまえば、また人を探さなければいけません。
だからこそ、質問の中で見ているのは「すごい人か」より、「現実的に長く働いてくれそうか」です。未経験でもここが伝われば十分採用される可能性はありますし、逆に経験者でもすぐ辞めそうに見えたら不利になります。
デイサービスの面接でよく聞かれる4つの質問
面接で聞かれることはたくさんありますが、まず準備すべきなのはこの4つです。ここが答えられれば、基本はかなり押さえられます。
なぜ介護職を選んだのですか?
なぜ介護職を選んだのかは、経験者でも聞かれやすい質問です。特に未経験者は、必ず聞かれると思っておいたほうがいいでしょう。ここで大切なのは、数ある仕事のなかから、なぜ介護職を選んだのかが伝わることです。
「人の役に立ちたい」は一見きれいに聞こえますが、それだけでは弱いです。人の役に立つ仕事は、介護職以外にもたくさんあるからです。
実際、僕が面接をしたときには、「人の役に立つ仕事はほかにもたくさんありますが、そのなかでなぜ介護なのですか」と聞き返したことがありました。
そこで答えに詰まってしまうと、介護職を選んだ理由が伝わらず、面接のために用意した言葉のように受け取られることがあります。
立派な理由を話す必要はありません。家族の介護を通してデイサービスを知った、祖母の介護でデイサービスに支えられた経験があるなど、自分のなかに介護へつながる理由があるなら、それを素直に話したほうが自然です。
なぜデイサービスとこの事業所を選んだのですか?
次に聞かれやすいのが、介護職のなかでも「なぜデイサービスなのか」「なぜこの事業所なのか」です。
理由を無理に分ける必要はありませんが、それぞれの質問に対する答えになっていることが大切です。介護職を選んだ理由だけを繰り返しても、デイサービスやその事業所を選んだ理由は伝わりません。
未経験者であれば、「介護職未経験でも始めやすいと思い、デイサービスを選んだ」という理由でも不自然ではありません。一方、なぜこの事業所なのかを伝えるには、事前にホームページを確認したり、見学に行ったりすることが役立ちます。
「ホームページを見て雰囲気が良いと感じた」「見学したときの職員の印象が良かった」といった理由には、実際に見聞きしたことならではの説得力があります。答えだけを考えるのではなく、その事業所について自分で確かめておくことが重要です。
面接前の準備は、服装や持ち物だけではありません。見学や情報収集まで含めて、面接前にやっておくべきことは別記事で詳しくまとめています。

なぜ前職を辞めたのですか?
前職を辞めた理由も、面接ではよく聞かれます。退職理由は、どうしてもネガティブな内容になりやすいものです。そのため、事実を隠す必要はありませんが、前職への不満や悪口としてそのままぶつけるのはよくありません。
たとえ本当にブラック企業的な職場だったとしても、感情的に話せば、面接官には別の意味でネガティブな印象が残ってしまいます。
その場合は、「職員同士の関係には恵まれていましたが、会社の方針と、自分が現場で大切にしたいことが合わなくなり、転職を考えました」といった伝え方ができます。
良かった部分も認めたうえで、自分に合わなかった部分を伝えれば、前職の悪口にせず、何が退職の理由だったのかは十分に伝わります。
一方で、「ステップアップのため」といった前向きな言葉だけでまとめるのも不自然です。それだけでは、次の職場で実現したいことを話しているだけで、前職を辞めた理由にはなっていません。
本当にステップアップが理由なら、前職では希望する役割を目指せる環境がなかったなど、なぜ転職が必要だったのかまで伝えることが大切です。本心ではない教科書的な答えに寄せるより、実際の退職理由を悪口にならない言葉で話したほうが自然です。
いつから働けますか?
デイサービスの面接では、「いつから働けますか」という質問への答えが、採否を大きく左右することがあります。人手不足を補うための募集では、能力や人柄に問題がなくても、働き始められる時期が遅ければ採用できない場合があるからです。
すぐに働けないこと自体が悪いわけではありません。また、面接を受ける前に現職へ退職を伝えておく必要もありません。ただし、「採用をいただいてから一か月後には働けます」など、入社できる時期の見通しは答えられるようにしておく必要があります。
最も避けたいのは、「会社に伝えてみないと分かりません」と、いつから働けるのかを明確にできない状態です。採用側は、その返答をもとに職員配置や今後の採用を考えます。
面接前に退職や引き継ぎの流れを整理し、実際に守れる入社時期を伝えることが大切です。
デイサービスの面接では、この4つ以外にもよく聞かれる質問があります。特に送迎に関する質問は、他の質問とは重みが違うため、別記事で詳しくまとめています。

面接では回答の内容だけでなく会話の流れも見られている
面接では、質問に対する回答の内容はもちろん、受け答えを通して会話が自然に続くかどうかも見られています。採用側は、何を答えたかだけでなく、相手の話を聞きながらやり取りできるかも確認しています。
模範解答に頼りすぎず自分の言葉で話す
模範的な回答を考えておくこと自体は悪くありません。ただし、準備した言葉をそのまま話そうとすると、受け答えが不自然になることがあります。質問の聞かれ方が少し変わっただけで答えに詰まり、会話がうまく続かなくなることもあります。
面接官は、応募者が事前に用意した回答をそのまま聞くために面接をしているわけではありません。覚えてきた答えを話していると感じれば、角度を変えて質問し、その人自身の考えを確かめようとします。
そこで答えられなくなるのであれば、最初から自分の考えをもとに話した方が、自然で説得力のある受け答えになります。
不自然な沈黙が続くとコミュニケーション力が伝わりにくい
介護の技術は、資格や経験からある程度は想像できても、面接だけで実際の力まで確認することはできません。その一方で、話し方や受け答えはその場で分かるため、採用側にとって判断しやすい部分です。
もちろん、少し考えたり、言葉に詰まったりすること自体が悪いわけではありません。ただ、覚えてきた模範解答を思い出そうとして「えーと」「うーん」が続き、沈黙が不自然に長くなると、普段どのように人とやり取りする人なのかが伝わりにくくなります。
きれいな回答を返すことにこだわるよりも、自分の考えを自分の言葉で話し、面接官と自然にやり取りできる方が、その人本来のコミュニケーション力は伝わります。
答えに迷ったときは無理に取り繕わない
想定していなかった質問をされ、その場ですぐに答えられないこともあります。そうしたときは、無理にもっともらしい答えを作るよりも、「そこは勉強不足でした」「そこまでは考えていませんでした」と素直に伝えた方が、誠実な印象につながります。
大切なのは、答えられなかったことで会話を止めたり、開き直ったりしないことです。すべての質問に完璧に答えることよりも、分からないことを正直に認め、その後も落ち着いて受け答えを続けることが大切です。
面接では、答えの内容だけでなく、その場での立ち振る舞いや会話の空気感まで見られています。面接当日の動き方については、こちらで詳しくまとめています。

デイサービスの面接は、まず基本をしっかり押さえる
ここまでいろいろ書いてきましたが、デイサービスの面接で特別な裏技が必要なわけではありません。
スーツで行く、必要な書類を揃える、時間を守る、よく聞かれる質問に備える、自然に会話をする。まず大切なのは、こうした基本を一つずつ押さえることです。
僕は採用側として三桁を超える面接に関わってきましたが、実際に採用へつながりやすかったのは、特別な経歴や高い介護技術を持つ人だけではありません。
清潔感があり、感じよく話すことができ、長く働きたいという気持ちが伝わる人です。介護の技術は入職してから覚えられますが、面接ではまず、こうした基本をしっかり押さえられているかが見られます。
面接が不安だからといって、難しい対策を次々に探す必要はありません。今回紹介した基本を見直し、一つずつ確実にできる状態で面接に臨むことが、採用に近づくための確かな一歩です。
面接を受ける側だけでなく、面接官が何を見ているのかを知っておくと、面接の受け方はかなり変わります。採用担当の視点や面接の裏側については、こちらで詳しくまとめています。

