デイサービスの面接というと、当日に何を聞かれるか、どう答えるか、どんな挨拶をするかといった部分ばかり意識されがちです。
しかし実際に採用の場に関わってきた立場から言うと、面接当日の受け答えはもちろん大切ですが、その出来を大きく左右するのが、面接前にどれだけ準備してきたかです。
面接当日の受け答えだけ整えても、事前に何も調べていない人の言葉はどうしても薄くなります。逆に、見学や情報収集をしてきた人は、同じ志望動機でも中身がまったく違ってきます。
面接前の準備は受かるための小手先の対策ではなく、自分に合う職場を見極めるためにも必要なことです。
面接当日の評価は事前準備で大きく変わる
面接で見られているのは、その場の受け答えの上手さだけではありません。本当にその事業所で働きたいと思っているのか、仕事内容や職場について理解したうえで応募しているのか、長く続けてくれそうかという部分まで見られています。その判断材料になるのが、事前準備の有無です。
面接本番だけを重視しても、準備は足りない
一般的な面接対策というと、質問集を見て答えを考えたり、挨拶やマナーを整えたりすることが中心になりがちです。もちろんそれも大事ですが、それだけで面接に行くと、どうしても表面的なやり取りになりやすいです。
実際によく聞かれる「なぜうちのデイサービスを希望したのですか」という質問も、十分な事前準備をしないままでは、どうしても答えが浅くなります。
「求人票を見て条件が良さそうだった」その程度の答えでは採用担当の心にはなかなか残りません。
事前準備がある人ほど受け答えに説得力が出る
一方で、事前に情報を集めている人は、同じ質問でも答えに具体性が出ます。準備をしてきた人の言葉は、いかにも模範解答を覚えてきた感じではなく、本当に自分で考えて応募してきたことが伝わります。
採用担当をしていると、その差はかなりはっきり見えます。受け答えが多少ぎこちなくても、事前に調べたうえで来ている人のほうが本気度を感じますし、入職後に「思っていた職場と違う」となることも少ない傾向があります。
まず確認したいのはホームページと発信内容
面接前の情報収集として、まず見ておきたいのはその法人や事業所のホームページです。ホームページには、その会社がどんな考えで運営しているのか、どんな雰囲気のデイサービスなのかがある程度出ています。
ホームページで見ておきたい法人の考え方
ホームページを見る意味は、単に会社概要を確認することではありません。法人として何を大事にしているのか、どんなサービスを目指しているのか、その方向性を知ることに意味があります。
現場で働く側にとっては、この考え方が自分に合うかどうかはかなり大事です。面接で受かることだけを考えるなら流し見でもいいかもしれませんが、長く働くつもりなら、その法人の考えに違和感がないかを見る必要があります。
ブログや日々の発信は面接時の材料にもなる
デイサービスによっては、利用者の日々の様子やレクリエーション、行事の様子などをブログなどで発信しています。こうした発信は、表面的な紹介よりも現場の動きが見えやすく、面接時の材料としてもかなり役立ちます。
たとえば、活動内容を見た上で「こういう雰囲気の中で働きたいと思った」と言えるだけでも、志望理由の中身が変わります。ただ求人を見て応募した人とは、受け答えの厚みが違ってきます。
ホームページだけで判断するのは禁物
ただし、デイサービスは小規模法人も多く、そもそもホームページがないところもあります。あっても情報がかなり薄いことも珍しくありません。だからホームページだけ見れば十分というわけではないです。
逆に、見栄えのいいホームページがあっても、現場の実態とは違う場合もあります。ホームページは大事な入口ですが、それだけで判断しないことも同じくらい大事です。
介護サービス情報公表システムで事業所の中身を確認する
ホームページだけでは分からない部分を補いたいなら、厚生労働省の「介護サービス情報公表システム」も確認しておきたいところです。本気で長く働きたい事業所なら、ここまで見ておく価値はあります。
取り組みの質や研修体制を客観的に見られる
この公表システムでは、事業所の基本情報だけでなく、研修への取り組みやサービスの質に関する項目なども確認できます。現場写真のような印象ではなく、取り組みを客観的に見やすいのが強みです。
実際、こうした情報を見ていると、その事業所が人材育成に力を入れているのか、形だけでやっているのか、ある程度の傾向が見えてきます。面接前の情報収集としてはかなり有効です。

数字や評価がすべてではないが目安にはなる
もちろん、ここに出ている評価がすべてではありません。僕が実際に関わった中にも、公表システム上の評価が高く見えなくても、良いデイサービスだと感じた事業所はあります。数字だけでは分からない良さも現場にはあります。
ただ全体として見ると、評判のいい事業所はこうした取り組みも比較的しっかりしていることが多いです。絶対視はできなくても、見ておく価値は十分あります。
評価が高くても中身が伴わない場合がある
たとえば、フランチャイズ系では、フランチャイズ本部の仕組みやマニュアルによって、数値や項目が一定水準に揃いやすくなります。ただし、実際の運営は加盟する法人ごとに異なるため、評価が似ていても現場の雰囲気や働きやすさまで同じとは限りません。
公表されている評価は、事業所の取り組みを知るうえで十分に参考になります。評価が高い事業所ほど良い取り組みをしている可能性も高いため、有力な判断材料として活用しながら、その数値だけを働きやすさと結びつけないことが大切です。
長く働くために運営状況や財務面も見る
面接前の準備というと、現場の雰囲気や仕事内容に目が行きやすいですが、長く働くつもりなら、事業所が安定して運営されているかも見ておきたいところです。
どれだけ雰囲気が良くても、事業所そのものが続かなければ、そこで働き続けることはできません。
財務諸表からは職場の安定性の一部が見える
今は運営状況の中で、財務諸表が見られるようになっています。財務の細かいことまで分からなくても、最低限、経営が厳しそうかどうかをざっくり見るだけでも意味があります。
働く側からすると見落としやすい部分ですが、長く勤めたい人ほど大事にしたい視点です。良い職場だと思って入っても、運営に無理があれば、将来的に働き続けることが難しくなる場合があります。
良い職場でも運営が苦しければ続かない
デイサービスは今、閉鎖する事業所も珍しくありません。これは大げさな話ではなく、実際に起きていることです。
現場の雰囲気が良い、利用者との関係が良い、職員同士の関係が良い。そうした部分はもちろん大切です。ただ、それだけでは事業所が続くとは限りません。会社として無理のない運営ができているかも、長く働くうえでは見ておきたい部分です。
平常時には意識しにくい運営面への不安
僕が働いていた職場でも、コロナの時期には利用者が減り、職員の中で「この会社は大丈夫だろうか」と不安を口にする人がいました。現場で働いていると、そうした空気は案外伝わってきます。
どんなに良い事業所でも、お金が回らなければ続かない。この現実はきれいごとでは済まされません。長く働くための準備という意味では、ここも見ておいて損はないです。
事業所見学で職場の雰囲気を確かめる
情報収集の中でも、特にやっておきたいのが見学です。ホームページや公表情報では分からない現場の空気は、実際に行ってみないと見えないことが多いです。
ホームページの印象だけで判断しない
ホームページは、事業所の良いところが伝わるように作られています。写真も文章も、できるだけ良い印象になるものを使うのが普通です。そのため、ホームページを見て感じた雰囲気と、実際の現場の印象が違うこともあります。
ホームページは、事業所の考え方や取り組みを知るうえで参考になります。ただ、それだけでは現場の雰囲気や職員同士の関係、実際の忙しさまでは分かりません。入職してから違いに気づくのを防ぐためにも、可能であれば面接前に見学しておくことが大切です。
見学対応する職員の印象も判断材料になる
見学では、現場のスタッフが対応してくれることも多く、そのスタッフと入職後に一緒に働く可能性もあります。そのため、対応してくれたスタッフの人当たりや、見学中に感じた職場の空気は、大きな判断材料になります。
採用担当が日常的に現場へ入っていない場合は、面接で聞く説明だけでは分からないこともあります。話の内容と現場で受ける印象に違いがないか、自分の目で確かめる意味でも、見学は有効です。
利用者の表情から事業所の雰囲気が見えやすい
僕が特に見てほしいと思うのは、利用者の表情です。スタッフは見学者を意識して普段以上に丁寧に対応することもできますが、利用者の様子まで簡単に作ることはできません。居心地のよさや普段の雰囲気は、利用者の表情に出やすいものです。
利用者が穏やかに過ごしているか、自然な表情をしているか。そこから感じる雰囲気は、実際に働いたときの職場の空気にもつながります。見学は、その事業所の温度感を感じ取る機会でもあります。

事業所見学は職場選びだけでなく面接にも生きる
見学の良さは、職場を選ぶためだけではありません。実際に見て感じたことは、志望動機や面接での受け答えにも生かせます。
採用担当から見ても、見学をした上で面接に来ている人は、事業所への関心や働く意欲が伝わりやすく、受ける印象も変わります。
見学した経験が志望理由の説得力を高める
たとえば、「ホームページを見て雰囲気が良さそうだった」という理由は、ほかの事業所にも使えます。一方で見学をしていれば、「職員や利用者の様子を見て、ここで働きたいと思った」と、その事業所を見たからこそ言える理由になります。
面接官にとっても、現場を見たうえで出てきた言葉は、表面的な志望理由として受け取られにくくなります。ありきたりな模範解答より、その事業所で働きたいという気持ちが伝わりやすく、説得力も高まります。

見学した上での応募は採用側の安心感につながる
採用する側としても、見学した上で応募してくれる人には安心感があります。実際の職場を見て、それでもここで働きたいと思ってくれたのであれば、事業所の雰囲気や働き方に納得して応募していると受け取れるからです。
採用側も、入職した人にはできるだけ長く働いてほしいと思っています。職場をよく知らないまま入職すると、働き始めてから「思っていた職場と違った」と感じ、すぐに辞めてしまうこともあります。
その点、見学した上での応募であれば、長く働いてくれる可能性も高いと感じられるため、採用でも前向きに受け取られやすくなります。
事前に現地へ行くことで面接当日の動きも落ち着きやすくなる
見学に行っておくと、面接当日に使う道順や実際にかかる時間を事前に確認できるメリットがあります。初めて行く場所では、道に迷わないか、時間に間に合うかと気になり、それだけで焦りやすくなります。
面接では、落ち着いて自分の考えを伝えることが大切です。事前に一度足を運んでいれば、当日は移動への不安が減り、面接そのものに集中しやすくなります。そういう意味でも、見学には単なる情報収集以上の意味があります。
見学できないときも事前準備で差はつけられる
すべての事業所が見学できるわけではありません。特に感染症対策の影響もあって、外部の見学を控えているところはあります。その場合は、別の形で準備をしていく必要があります。
見学を断られる事業所があるのは珍しくない
事業所見学は、できる限りしておいた方がいいです。ただし、必ず受けてもらえるわけではありません。冬場など感染症が広がりやすい時期には、見学を受けていない事業所もあります。
そのようなこともあるため、ホームページや介護サービス情報公表システムなども活用し、事前に確認できることは押さえておく必要があります。見学を含め、利用できる方法を使いながら、できる限りの準備を進めておくことが大切です。
見学の問い合わせは迷惑ではなく意欲も伝わる
断られることがあるなら、問い合わせても意味がないと思うかもしれません。しかし、「見学は可能ですか」と確認すること自体にも意味があります。自分の目で確かめてから応募先を選ぼうとする姿勢は、採用側にも意欲として伝わります。
見学をお願いすると迷惑になるのではないかと心配する人もいますが、事業所側も、仕事内容や職場の雰囲気を知ったうえで応募してほしいと考えています。その方が、入職後の行き違いや早期離職を防ぎやすくなるためです。
感染症対策などで見学を断られることはありますが、問い合わせたこと自体が悪い印象になるわけではありません。迷惑になるかもしれないと遠慮せず、気になる事業所には一度確認してみていいと思います。
見学したから必ず応募しなければいけないわけではない
見学をすると、そのまま応募しないと悪い気がする人もいますが、そんなことはありません。見学してみて、自分の理想と違うと感じたなら、応募を見送っても大丈夫です。
事業所側にとっても、面接まで進んでから辞退されるより、見学の段階で判断してもらった方が助かることがあります。見学は応募するかどうかを決めるために行うものであり、その後の応募を約束するものではありません。
ただし、見学のために時間を取ってもらった以上、応募しないと決めた場合は、そのままにせず辞退の連絡を入れた方が丁寧です。見学のお礼とともに、今回は応募を見送ることを伝えておきましょう。
面接前の準備は、受かるためだけのものではない
ここまで見てきたように、面接前の準備は、採用につなげるためだけに行うものではありません。自分に合う事業所を見極め、入職後も長く働き続けるための準備でもあります。
採用されることをゴールにすると職場選びを誤る
転職活動をしていると、どうしても早く次を決めたい気持ちが強くなります。その結果、受かることがゴールになってしまう人もいます。しかし本来の目的は、今より良い環境で長く働ける職場を見つけることのはずです。
受かることを最優先にすると、入職後に「思っていた職場と違った」と後悔することがあります。それでは、転職した本来の目的を果たせません。

事前準備が入職後の後悔を減らす
事前に情報を集め、見学できる場合は現場も確認したうえで面接に進めば、自分に合う職場かを判断しやすくなります。入職後に職場選びを後悔する可能性も減らせます。
準備をしてから面接に臨む人は、志望理由や質問にも具体性が出ます。事業所への理解や働く意欲も伝わりやすくなるため、面接前の準備はとても重要です。
面接前の準備が採用と職場選びの両方につながる
ホームページや公表システムで情報を集め、可能であれば実際に見学しておくと、面接での志望理由や質問にも具体性が出ます。事業所への理解や働く意欲が伝わりやすくなるため、面接前の準備は採用にも関わる重要なポイントです。
同時に、事前に職場の特徴や雰囲気を確認しておくことで、自分に合う事業所かどうかも判断しやすくなります。つまり面接前の準備とは、採用に近づくためだけでなく、自分に合う職場を選び、入職後も無理なく長く働き続けるための準備です。
