デイサービスで働いてみたいと思ったとき、「自分は向いているのだろうか」と不安になる人もいると思います。すでに介護職として働いている人でも、デイサービスの仕事内容や働き方が自分に合うのか気になることもあるでしょう。
実際、デイサービスの仕事には、向いている人と向いていない人がいます。人と関わる仕事であり、利用者の安全にも関わるため、誰にでも向いている仕事とは言えません。
ただし、少し苦手なことがあるだけで「自分はデイサービスに向いていない」と決めつける必要はありません。現場で見てきた感覚としては、向いていない人というより、職場環境や役割分担が合っていないだけの人も多くいます。
この記事では、介護職員、相談員、管理者、採用担当としてデイサービスの現場を見てきた経験から、デイサービスに向いていない人の特徴と、苦手だけで判断しないための見極め方について書いていきます。
「向いていない」と「苦手」は違う
デイサービスに向いていない人を考えるとき、最初に分けて考えたいのは「苦手なことがある人」と「仕事の根本的な部分が合わない人」です。この二つを一緒にしてしまうと、本当は働ける可能性がある人まで、自分には向いていないと思い込んでしまいます。

苦手なことが一つあるだけで向いていないとは限らない
デイサービスの仕事には、利用者との関わり、職員同士の連携、身体介助、送迎、レクリエーションなど、さまざまな業務があります。そのため、どこか一つに苦手意識がある人は珍しくありません。
大切なのは、苦手な業務があるかどうかではなく、デイサービスの仕事の根本にある部分を受け入れられるかどうかです。苦手なことがあるという理由だけで、向いていないと判断するのは早いでしょう。

向き不向きは職場環境や役割分担でも変わる
デイサービスは、事業所によって働き方がかなり違います。送迎やレクリエーションなどの業務を専任の職員が担当する場合もあれば、介護職員が幅広い業務を担う場合もあり、役割分担はさまざまです。
そのため、自分に苦手な部分があるからといって、すべてのデイサービスが合わないとは限りません。合わない職場で働けば負担になりますが、苦手を補える環境であれば続けられることもあります。
向き不向きを考えるときは、「デイサービスの仕事そのものが自分に合わないのか」「働く職場の環境が自分に合っていないのか」を分けて考えることが大切です。
高齢者と関わること自体が嫌いな人はデイサービスでは難しい
デイサービスは、高齢者の生活を支え、安全に配慮しながら、その人らしく一日を過ごせるように関わる仕事です。そのため、高齢者と関わること自体が嫌いな人には、根本的に向いていない仕事だと考えています。

高齢者が嫌いな人はデイサービスに向いていない
僕がデイサービスの現場で15年間働いてきた中で、「この人はデイサービスに向いていないのかもしれない」と、唯一と言っていいほど強く感じたのは、高齢者と関わること自体を嫌がっている人でした。
他の業務が苦手というだけなら、職場環境や役割分担で補えることがあります。しかし、高齢者への関心や敬意が薄く、関わることそのものが嫌いであれば、デイサービスで働くことは難しいと思っています。
高齢者への気持ちは利用者対応にも表れる
現場で働いていると、「この人は高齢者のことがあまり好きではないのかもしれない」と感じる職員を見ることがあります。利用者への声かけが雑になったり、対応に冷たさが表れたりすることがあるからです。
本人に悪気があるかどうかは別として、利用者や家族はそうした態度を感じ取ることがあります。対応が雑になれば利用者が不安を感じたり、家族からの苦情につながったりすることもあります。
デイサービスでは、食事や入浴、レクリエーションなど、さまざまな場面で高齢者と関わります。その関わり自体を嫌がっていては、利用者が安心して過ごせる環境をつくることも難しくなります。
コミュニケーションが苦手な人はデイサービスに向いていない?
デイサービスでは、利用者とのコミュニケーションが欠かせません。しかし、話すことが得意でなければ務まらない仕事ではありません。自分から積極的に話しかけるのが苦手な人でも、利用者との関わり方によっては十分に力を発揮できます。

話すのが苦手なだけなら向いていないとは限らない
コミュニケーションというと、自分から話題を作ったり、会話を盛り上げたりすることを思い浮かべる人もいるでしょう。しかし、利用者を楽しませる話術や、誰とでも積極的に話せる性格が必要というわけではありません。
デイサービスには、さまざまな性格の利用者がいます。会話を楽しみたい人もいれば、静かに過ごしたい人もいます。大切なのは、無理に会話を盛り上げることではなく、相手に合わせた関わり方ができることです。
聞き上手な人は利用者から信頼されやすい
デイサービスでは、職員が一方的に話し続ければよいわけではありません。利用者の話に耳を傾け、表情や様子から体調や気持ちの変化に気づくことも、コミュニケーションの大切な役割です。
僕が現場で見てきた中でも、利用者から信頼される職員には、相手の話を丁寧に聞ける人が多いと感じます。自分の話ばかりするのではなく、利用者が話したいことを受け止められる人です。
自分から話題を作るのが苦手でも、相手の話にしっかり耳を傾けられることは、デイサービスで働くうえで大きな強みになります。話し上手であることだけが、コミュニケーション能力ではありません。
体力に大きな不安がある人は介護職員として慎重に考える
デイサービスで働くうえで、体力面を心配する人もいると思います。介護の仕事である以上、身体介助には一定の体力が必要です。ただし、体力に自信がないという理由だけで、デイサービスの仕事は自分には向いていないと判断するのは早いかもしれません。

介護職員として働くには一定の体力が必要
デイサービスでは、入浴介助、移動の支援、立ち上がりのサポートなど、日常的に身体介助を行います。利用者がふらついたときに身体を支えたり、車椅子から椅子への移乗を介助したりする場面もあります。
こうした介助を安全に行うためには、介護技術だけでなく、ある程度の体力も必要です。デイサービスは日中のサービスですが、身体を動かす仕事が多く、決して体力的に楽な仕事ではありません。
デスクワーク以外は自分には難しいと感じるほど体力に不安があるなら、介護職員として働くことは慎重に考えた方がいいでしょう。日常的な介助に対応できるかどうかは、大切な判断材料になります。
入所施設と比べて身体的な負担は軽い
入所施設では、寝たきりの方のおむつ交換や夜間の対応など、身体的な負担が大きくなる仕事が多くあります。一方、デイサービスでは比較的介護度の低い利用者が多く、入所施設ほど身体的な負担の大きい介助は求められません。
介護の仕事には相当な体力が必要で、体力に自信がなければ働けないと思っているなら、必ずしもそうではありません。デイサービスでも一定の体力は必要ですが、介護技術や身体の使い方によって補える部分もあります。
実際、僕が勤めていた事業所では、75歳の職員が入浴介助を行っていたこともありました。介護技術を身につけ、身体の使い方を工夫することで、体力だけに頼らずに働ける部分もあります。
介護職員が難しい場合は介護助手という選択肢もある
体力面の不安から介護職員として働くことが難しい場合でも、デイサービスに関わる方法がなくなるわけではありません。事業所によっては、介護助手として働く選択肢もあります。
介護助手は、身体介助を中心に行うのではなく、環境整備や職員の補助、利用者と一緒に過ごすことなどを担当します。すべての事業所にある働き方ではありませんが、体力面に不安がある人にとっては選択肢の一つになります。
大切なのは、体力に不安があるからといってすぐに諦めるのではなく、自分がどのような役割なら無理なく働けるのかを考えることです。
運転が苦手な人は送迎業務が負担になりやすい
デイサービスならではの仕事の一つに、利用者の送迎があります。特に運転が苦手な人にとっては、大きな負担になることもあります。ただし、送迎があるからといって、すべての介護職員が運転を担当するわけではありません。

利利用者を乗せる送迎運転には大きな責任がある
デイサービスでは、介護職員が送迎車を運転する事業所も多くあります。求人票に「要普通免許」と記載されている場合は、運転も仕事の一つになる可能性が高く、苦手な人にとっては負担の大きい業務です。
送迎では高齢の利用者を乗せるため、普段の運転以上に安全への配慮が求められます。急発進や急ブレーキ、急ハンドルを避けることはもちろん、決められた時間に利用者の自宅を回るため、時間管理にも気を配らなければなりません。
運転が苦手な人にとって、こうした責任や時間的なプレッシャーは大きなストレスになります。毎日のように送迎車の運転を任される職場では、仕事を続けるうえで大きな負担になります。
運転が苦手でもデイサービスに向いていないわけではない
デイサービスは利用者の送迎を行いますが、すべての事業所で介護職員が運転を担当しているわけではありません。送迎専門の運転手を配置している事業所もあれば、介護職員は添乗だけを担当する職場もあります。
そもそもデイサービスは、利用者の介護や日常生活の支援を行う場所です。送迎の運転も大切な業務の一つですが、運転が苦手だからといって、デイサービスの介護職員に向いていないというわけではありません。
大切なのは、応募する事業所で運転業務が必須なのかを確認することです。求人票や面接で担当する業務を確かめ、自分に合った職場を選ぶことで、運転に苦手意識があってもデイサービスで働くことは十分にできます。

レクリエーションが苦手な人は役割分担で働きやすさが変わる
レクリエーションは、デイサービスの仕事の中でも中心となる活動の一つです。人前で話したり、利用者を楽しませたりすることが苦手な人には、大きなストレスになります。ただし、事業所によって担当の仕方や役割分担が異なるため、負担の大きさも変わります。

レクリエーションが苦手な人は仕事でストレスを感じやすい
デイサービスでは、レクリエーションも大きな仕事の一つです。利用者に楽しんでもらう時間を作るだけでなく、体を動かしたり、会話のきっかけを作ったりする役割もあります。
人前で声を出すのが苦手な人や、みんなをまとめて進行することが苦手な人にとっては、レクリエーションが負担になることがあります。企画を考えること自体が苦手な人もいます。
多くのデイサービスでは、レクリエーションが一日の活動の中心になります。そのため、レクリエーションへの苦手意識が強い人にとっては、日々の仕事で大きなストレスを感じる原因になります。
レクリエーションが苦手でも役割分担で負担が軽くなる
レクリエーションが苦手だからといって、デイサービスに向いていないわけではありません。事業所によっては、介護職員全員がレクリエーションを同じように担当するわけではありません。
リハビリや体操を中心にしているデイサービスでは、機能訓練指導員が中心になって進める場合もあります。レクリエーションが得意な職員が主担当になり、他の職員は補助に回るような役割分担をしている職場もあります。
最初は苦手でも、利用者との関係ができてくると少しずつ慣れていく人もいます。大切なのは、自分が苦手な業務をどれくらい担当する職場なのかを事前に確認することです。

不安や失敗を引きずりやすい人は精神的に疲れやすい
デイサービスでは、高齢の利用者の安全や健康状態に常に気を配る必要があります。ちょっとした変化が大きな事故につながることもあるため、神経を使う仕事です。ただし、気になる出来事をいつまでも引きずってしまう人は、精神的な負担が大きくなります。

出来事を重く受け止めすぎると精神的な負担になる
デイサービスでは、利用者が転倒しそうになったり、普段と体調が違ったりするなど、注意が必要な場面があります。小さな変化に気づくことは大切ですが、そのたびに強い不安を感じてしまうと、精神的に疲れてしまいます。
実際に事故やミスが起きたときは、適切に対応し、原因を振り返って再発を防ぐ必要があります。しかし、どれだけ注意していても事故を完全に防ぐことは難しく、起きてしまった出来事をいつまでも悔やみ続けていては、精神的な負担が大きくなります。
責任を持って事故に対応することと、その出来事を精神的に引きずり続けることは別の話です。注意深く仕事に取り組むことは大切ですが、失敗や不安をいつまでも引きずってしまう人は、デイサービスで働くうえで大きなストレスを感じやすくなります。
不安を共有できる職場なら精神的な負担も軽くなる
精神的な負担の大きさは、本人の性格だけで決まるものではありません。気になることや不安なことを職員同士で共有し、相談できる環境があるかどうかでも大きく変わります。
分からないことを聞けなかったり、事故やミスを責められるだけで終わったりする職場では、不安がさらに大きくなります。反対に、周囲の職員が一緒に考え、適切に対応してくれる環境であれば、精神的な負担は軽くなります。
不安や失敗を引きずりやすい人でも、それだけでデイサービスに向いていないわけではありません。気になることを相談でき、失敗したときにも前向きに仕事に取り組める職場環境が大切です。
チームで働くことが苦手な人はデイサービスでは働きにくい
デイサービスは、介護職員や看護職員、機能訓練指導員など、さまざまな職種が協力して利用者を支える仕事です。そのため、チームで働くことが苦手な人や、自分の仕事だけをしていればいいと考える人は、現場で働きにくさを感じやすくなります。

自分のやり方だけを通すと現場の連携が崩れる
介護の現場では、職員それぞれに経験や考え方の違いがあります。しかし、自分のやり方だけを押し通そうとすると、周囲との連携が難しくなり、仕事にも支障が出てしまいます。
利用者への対応は、職員同士で情報を共有し、協力しながら進める必要があります。しかし、周囲の意見を聞かずに勝手な判断で動くなど、自分のやり方にこだわりすぎると、利用者にも職員にも負担がかかります。
デイサービスは職員がそれぞれの役割を担いながら、一つのチームとして働く職場です。そのため、協調性がなく、自分の考えややり方を優先してしまう人は、現場の中で働きにくくなります。
周りをフォローする意識がない人はチームケアに合わない
デイサービスでは、自分の担当業務だけをこなしていればよいわけではありません。入浴介助が長引けば他の職員がフロアを支えたり、送迎準備が重なれば手の空いている職員がフォローに回ったりすることもあります。
自分の仕事以外は関係ない、周りの職員を手伝いたくないという考え方では、チームでの仕事はうまく進みません。利用者を支えるためには、それぞれの役割を果たすだけでなく、職員同士で助け合うことも必要です。
もちろん、何でも引き受ければよいわけではありません。ただ、周囲の状況を見て必要なときに協力できなければ、チームの一員として働くことは難しくなります。デイサービスでは、周りと協力する姿勢が大切です。
頑張りすぎる人もデイサービスでは続かなくなることがある
デイサービスに向いていない人というと、協調性がない人や仕事に消極的な人を想像するかもしれません。しかし、現場で働いてきた中では、人一倍頑張っている人が仕事を続けられなくなる姿も見てきました。
責任感があり、利用者や周りの職員のために一生懸命働くことは、介護職として大切なことです。ただ、その気持ちが強くなりすぎると、自分自身を追い込み、仕事を続けることさえ難しくなってしまいます。

優しい人ほど人に頼れず自分を追い込みやすい
僕は、介護職には優しい人が多いと感じています。利用者のために頑張りたい、周りの職員に迷惑をかけたくない、自分がもう少し動けば誰かが助かる。そんなふうに、人のことを優先して考える職員を多く見てきました。
しかし、その思いが強くなりすぎると、人に頼ることが難しくなります。自分が休めば周りに迷惑がかかると考えたり、頼まれた仕事を断れなかったり、つらくても弱音を吐けなかったりして、少しずつ自分を追い込んでしまいます。
会社にとって、責任感が強く、周りのために働いてくれる職員はありがたい存在です。しかし、無理を重ねて疲れ切ってしまえば、本人がどれだけ頑張りたくても、仕事を続けられなくなってしまいます。
頑張りすぎて退職した介護職員の事例
以前勤めていた職場に、20代前半の男性介護職員がいました。未経験から介護の仕事を始めた職員で、決して器用なタイプではありませんでしたが、目の前の仕事に一生懸命取り組んでいました。
その職場には経験豊富な職員もいましたが、パート職員が多く、彼は若いながらも正社員として強い責任感を持っていました。自分がしっかり頑張らなければいけないという思いが、次第に大きくなっていたのだと思います。
僕も時々話を聞き、少しでも気持ちを楽にしてもらおうとしていました。しかし、彼はいつも「大丈夫、頑張ります」と答えていました。利用者からも可愛がられ、人に喜んでもらうことを大切にする職員でした。
ところが、あるときパート職員と衝突し、それまでため込んでいたストレスが一気に表に出てしまいました。その日、彼は僕に退職することを告げ、それを最後にデイサービスへ来ることはありませんでした。

責任感だけで現場を支えようとすると限界が来る
彼が退職した後、自分が現場を回しているという思いを周囲に口にしていたことを知りました。責任感を持って働くことは大切ですが、自分だけで現場を支えなければいけないと思い詰めてしまうと、いつか限界が来ます。
介護の仕事では、良いことも悪いことも職員同士で分け合うことが大切です。つらいときに愚痴をこぼすことも、僕は悪いことだとは思いません。誰かに話を聞いてもらうだけでも、気持ちが楽になることはあります。
頑張りすぎる人は、デイサービスに向いていないわけではありません。むしろ、利用者や周りの職員のために一生懸命働ける人です。だからこそ、自分を追い込みすぎて仕事を続けられなくなるのは、本当にもったいないことだと思います。
苦手があってもデイサービスに向いていないわけではない
ここまで、デイサービスの仕事で苦手意識を持ちやすい部分について紹介してきました。しかし、どれか一つに当てはまったからといって、それだけでデイサービスに向いていないとは言えません。
大切なのは、仕事そのものが自分に合っていないのか、それとも職場環境や役割分担によって働きにくさを感じているのかを分けて考えることです。

苦手を補える職場なら働きやすさも変わる
デイサービスにはさまざまな事業所があり、仕事内容や職員の役割分担、職場の雰囲気も違います。苦手な業務があっても、周りの職員と協力しながら、自分の力を発揮できる職場はあります。
今の職場で働きづらさを感じている人も、それがデイサービスの仕事そのものに原因があるとは限りません。同じデイサービスでも、働く職場が変わるだけで、仕事への負担や働きやすさは大きく変わります。
苦手なことを無理に克服するだけが答えではありません。自分に合わない環境で無理を続けるよりも、苦手な部分を補い合いながら働ける職場を選ぶことが大切です。
高齢者との関わりが嫌いな人と苦手なことがある人は違う
僕がこれまでデイサービスで働いてきた中で、根本的に向いていないと強く感じたのは、高齢者と関わること自体が嫌いな人です。高齢者の生活を支える仕事だからこそ、その関わりを嫌がる人には難しい仕事だと考えています。
一方で、高齢者の役に立ちたい、生活を支えたいという気持ちがあるなら、苦手な業務があるだけでデイサービスに向いていないとは思いません。仕事の一部分が苦手なことと、仕事そのものが向いていないことは別です。
自分はデイサービスに向いていないのではないかと悩んでいる人には、その違いを考えてほしいと思います。苦手なことだけで判断せず、自分に合った職場を見極めることが、デイサービスで働くうえで大切です。


