デイサービスの入浴介助というと、「利用者をお風呂に入れる仕事」というイメージが強いと思います。ただ、実際の現場では、身体を洗って浴槽に入れて終わりというほど単純な仕事ではありません。
入浴介助では、身体を清潔に保つことが大切な役割です。ただ、それだけではなく、入浴前の体調確認や皮膚状態のチェック、転倒や急変への注意も必要で、利用者によって必要になる介助の量もかなり違います。
僕はデイサービスで15年間働く中で、入浴介助のきつさも、利用者と一対一で関わる良さも見てきました。この記事では、実際に何をするのか、どこが大変なのか、事業所や利用者による違いまで紹介します。
デイサービスの入浴介助の目的
デイサービスで気持ちよくお風呂に入ってもらうことは大切です。ただ、入浴介助の中心にあるのは身体を清潔に保つことで、そのうえで体調や皮膚の状態など、入浴だからこそ確認できる変化も見ていきます。

清潔保持が入浴介助の基本になる
デイサービスの入浴介助で基本となる目的は、身体の清潔保持です。気持ちよくお風呂に入ってもらうことや気分転換も大切ですが、まずは身体を清潔に保つことが中心になります。
自宅で一人では入浴できない人や、家族だけでは介助が難しい人にとって、デイサービスでの入浴は在宅生活を続けるうえでも大きな役割があり、家族の介護負担を軽くするという意味もあります。
一方で、利用者すべてに大きな介助が必要なわけではありません。僕が働いていた事業所にも、職員は近くで見守る程度という利用者が何人もいました。入浴介助といっても、必要な支援は人によって異なります。
入浴中は皮膚の状態を確認する時間でもある
入浴では衣服を脱いでもらうため、普段は見えない痣や傷、発赤などの皮膚トラブルを確認できます。実際、フロアでは気づかなかった身体の変化を、入浴中に初めて見つけることは珍しくありません。
痣などを見落としたまま帰宅すると、家族から「入浴したのに気づかなかったのか」と言われることもあります。現場ではこういうことがあるので、入浴担当は身体を洗うことだけを考えていればいいわけではありません。
異変を見つけたら看護職員やほかの職員へ伝え、必要な内容は記録に残します。清潔を保ちながら、普段は見えない身体の変化にも気づくところまで含めて、僕は入浴介助の仕事だと思っています。
デイサービスの入浴介助の流れ
入浴介助は、浴室へ連れて行って身体を洗えば終わりではありません。利用者が浴室へ入る前から始まり、衣服の着脱や洗身、浴槽への出入り、入浴後の対応までが一つの流れになっています。

入浴前にバイタルと体調を確認する
入浴前には血圧や体温などを確認し、その日の体調を見ます。数値に明らかな異常があれば入浴を中止しますが、数字に問題がなくても、普段と比べて今日は少し様子が違うと感じる利用者はいます。
そういう時は、浴槽に入らずシャワー浴へ変更したり、さらに身体への負担が少ない清拭で対応したりします。バイタルの数字だけではなく、普段の様子を知っている職員だから気づける変化もあります。
入浴前にはトイレを済ませてもらうのが一般的で、冬場であれば脱衣所と浴室の温度差によるヒートショックのリスクにも気を配る必要があります。安全に入浴してもらうための仕事は、浴室へ入る前から始まっています。
着脱・移動・洗身ではできない部分を支える
入浴時には、衣服の着脱、浴室までの移動、洗身や洗髪、浴槽への出入りなどを支援します。 何でも職員がやるのではなく、自分でできることは利用者に行ってもらい、自分で行うのが難しい部分を支えるのが基本です。
身体の前側は洗えても背中や頭には手が届かない利用者もいますし、立ち上がりはできても、濡れた床を歩く時や浴槽をまたぐ時だけ支えが必要な利用者もいて、必要な介助の範囲は利用者一人ひとりで違います。
もう一つ忘れてはいけないのが、利用者の羞恥心への配慮です。 タオルで身体を隠すなど、できるだけ恥ずかしさに配慮しながら介助する必要があり、ただ身体を洗えばいいという仕事ではありません。
入浴後の対応や記録までが仕事になる
入浴後は身体を拭き、衣服を着てもらい、必要に応じて髪を乾かします。その後に水分補給をしてもらうことも多く、利用者にとって入浴が終わったように見えても、職員の仕事はまだ続いています。
入浴中に痣や傷、皮膚状態の変化を見つけた場合は、その内容を記録します。あとから家族やほかの職員に確認された時にきちんと説明できるよう、見つけた変化はその場で残しておく必要があります。
入浴後に爪切りを行う事業所もありますが、水分補給や爪切りまで入浴担当が行うのか、ほかの職員が受け持つのかは事業所によって違います。このあたりは職員配置や仕事の分け方で変わります。
デイサービスで行う入浴の種類
一口に入浴介助といっても、すべて同じ方法で行うわけではありません。浴室の設備や利用者の身体状況、その日の体調によって、一般浴や機械浴、シャワー浴などを使い分けていきます。

一般浴は機械を使わない通常の入浴
一般浴は、入浴用の機械を使わずに職員の介助などで浴槽へ入る方法です。全身浴や半身浴などがあり、利用者の身体状況に合わせて入浴方法を選び、必要に応じてバスボードなどの補助用具を使うこともあります。
小規模なデイサービスでは、一人ずつ個浴に入る形もよくあります。浴槽への出入りを職員が直接支えるため、介助量の多い利用者が続けば、それだけ職員の身体にかかる負担も大きくなります。
ただ、一般浴だから重い介助になるとは限らず、自分で浴槽へ入れる人もいれば、職員は近くで見守るだけという人もいます。同じ一般浴でも、利用者の状態によって仕事の重さはかなり違います。
機械浴は入浴用の機械を使った入浴
機械浴は、入浴用の機械を使って浴槽へ入る方法です。座ったまま入るチェアー浴や、寝た状態で入るストレッチャー浴などがあり、立ち上がりや浴槽への出入りが難しい人に使われます。
入所施設では比較的よく見られますが、デイサービスでは一般浴を中心にしている事業所も多く、機械浴があるとは限りません。特に小規模なデイサービスでは、一般浴だけというところも珍しくありません。
入所施設の入浴介助をイメージしていると、デイサービスでは思っていた印象と違うこともありますが、これは事業所の規模や役割、利用者の状態によって、必要とされる入浴設備や入浴方法が変わるためです。
シャワー浴は体調や体力に合わせた入浴
シャワー浴は、浴槽には入らずシャワーで身体を洗う方法です。浴槽へ入ると体力を消耗しやすい人や、その日の体調に少し不安がある人に対して、身体への負担を抑えるために行うことがあります。
バイタルに大きな異常がなくても、表情や様子を見て今日は全身浴をやめた方がいいと判断することがあり、その場合は無理に浴槽へ入れるのではなく、シャワー浴や清拭へ切り替えます。
清拭だけでは入浴介助加算は算定できませんが、現場では加算を取るために無理をして浴槽へ入れるわけにはいきません。その日の体調を見ながら方法を変えることも、入浴担当が行う判断の一つです。
デイサービスの入浴介助で大変なこと
デイサービスの仕事の中でも、入浴介助は身体的な負担が大きい役割です。ただ、そのきつさは事業所によってかなり差があり、利用者の介護度や介助量、職員配置、浴室設備によって実際の負担も大きく変わります。

介護度や職員配置で負担は大きく変わる
僕が働いていたデイサービスでは、見守り程度で入浴できる利用者も多く、その場合は身体的な負担もそれほど大きくありませんでしたが、反対に、ほぼ全身を支える利用者が続けば一気にきつくなります。
大規模なデイサービスでは、着脱や洗身、浴室内の介助を職員同士で分担して進めることが多く、複数の利用者に対応するぶん、流れを止めずに進める大変さがあります。
小規模なデイサービスでは、一人の職員が着脱から洗身、水分補給まで担当することもあり、入浴介助の負担は一律ではなく、利用者の介護度や人数、設備、職員配置によって大きく変わります。
入浴中は体調急変や転倒への注意が必要
入浴介助が大変な理由の一つは、事故や急変のリスクがあることです。入浴中は体調が変化しやすく、濡れた床では転倒の危険もあるため、利用者の様子を見ながら慎重に進めなければなりません。
僕が働いていたデイサービスでも、入浴中に利用者が意識を失い、救急車で運ばれたことが複数回ありました。頻繁に起こることではありませんが、実際に経験すると、入浴介助は常に緊張感を持って行う必要がある仕事だと感じます。
何事もなく入浴を終えるのが当たり前に見えるかもしれません。ただ、その当たり前を守るためには、小さな変化を見逃さず、何かあればすぐ対応できるよう常に利用者の様子を見ておく必要があります。
入浴介助は利用者対応でも大変なことがある
入浴介助では、身体を支えることだけでなく、利用者本人の気持ちや家族の希望を考えながら対応しなければならない場面もあります。特に入浴を嫌がる利用者では、本人と家族の間に入ることで、身体介助とは違った難しさが出てきます。

入浴拒否の対応は特に負担が大きい
デイサービスでは、一定数お風呂に入りたがらない利用者もいます。自宅では入るけれどデイサービスでは入りたくない人もいれば、自宅でも入浴せず、家族が「どうしてもデイサービスで入れてほしい」と希望しているケースもあります。
そういう時は、話題を変えたり少し時間を置いたり、入りやすいタイミングを探したりしながら声をかけていきます。ただ、どれだけ工夫しても、デイサービスではどうしても入りたくないという強い意思を持っている利用者もいます。
そういう利用者に対して、最終的にその日は「入浴できませんでした」となることもあります。担当した職員としては、自分の進め方が悪かったのではないかと考えて、自信をなくしてしまうこともあり、こうした精神的な負担も入浴介助の大変さの一つです。
同性介助は理想どおりにできないこともある
入浴介助では同性介助が理想とされることがありますが、現実にはそんなにきれいに分けられないことも多いです。特に小規模なデイサービスでは、一人の介護職員がその日の入浴介助をすべて担当することも一般的です。
身体を支えることが多い入浴介助は、体力面だけを考えれば男性職員の方が負担を感じにくい仕事です。ただ、デイサービスは女性利用者が多いため、同性介助を優先すると女性職員に入浴担当が偏りやすくなります。
利用者の希望や恥ずかしさへの配慮は必要ですが、限られた職員でその日の仕事を回さなければならないのも現実で、同性介助を理想どおりに徹底することが難しい場面もあります。
入浴介助には利用者と深く関われる良さもある
ここまで大変なことを多く書きましたが、入浴介助はきついだけの仕事ではありません。実際、僕が一緒に働いてきた職員の中にも、身体的には大変でも入浴担当は嫌いではないという人がいました。

個浴では一対一で利用者と話せる
小規模のデイサービスでは個浴が多く、利用者と一対一になる時間があります。フロアでは常に複数の利用者を見ているため、一人の利用者と落ち着いて話せる時間は、実際にはそれほど多くありません。
入浴中には、普段のフロアでは出てこない話を聞くことがあります。ほかの利用者との人間関係や、自宅で困っていることなど、周りに人がいないからこそ話してくれることもありました。
体力的には大変でも、入浴担当は嫌いではないという職員もいます。大勢の利用者を見るより、一人の利用者とじっくり関わる方が向いている人にとっては、入浴の時間にやりがいを感じることもあります。
声かけや進め方には職員の得意不得意が出る
入浴介助は、決められた手順だけ覚えれば誰でも同じようにできる仕事ではありません。同じ言葉をかけても、誰が言うのか、どのタイミングで言うのかによって、利用者の反応が変わることがあります。
入浴を嫌がる利用者をどう誘うのか、自分でできる動作をどこまで待つのか、恥ずかしさへどう配慮するのか。こういう部分はマニュアルだけでは難しく、その職員の経験や利用者との関係性がかなり出ます。
最初は入浴介助が苦手だった職員でも、その利用者の癖や声かけのタイミングが分かってくると、対応しやすくなることもありますし、逆に経験があっても苦手な人はいて、得意不得意が出やすい仕事だと思います。
体力があるだけでは向いているとは言えない
入浴介助にはもちろん体力が必要ですが、身体が強ければ入浴担当に向いているかというと、僕はそうではないと思っています。一対一の関わりを苦にせず、相手の変化を見られることも大切です。
入浴担当が好きな職員も、身体的なきつさを感じていないわけではありません。それでも利用者と近い距離で関われたり、普段は見えない変化に気づけたりすることに良さを感じています。
反対に、体力があっても入浴拒否への声かけや事故への緊張感を大きな負担に感じる人はいます。入浴介助の向き不向きは、単純に力仕事が得意かどうかだけでは決まらないと僕は思います。
デイサービスの入浴介助にはさまざまな役割がある
デイサービスの入浴介助は、身体を清潔に保つことを基本にしながら、利用者の状態に合わせて進めていく仕事です。ただ、実際の介助量や大変さはどこでも同じではなく、利用者の状態や設備、職員配置によってかなり変わります。

入浴介助の負担は現場を見ないと分からない
利用者の介護度が低く、見守り中心の事業所であれば、入浴担当の身体的な負担はそれほど大きくないこともあります。反対に介助量の多い利用者が多ければ、一人を入浴介助するだけでもかなり体力を使います。
個浴なのか大浴槽なのか、機械浴があるのか、一日に何人が入浴し、何人の職員で担当するのかによっても仕事は変わるため、デイサービスの入浴介助という言葉だけでは実際の大変さまでは分かりません。
お風呂に入れるだけの仕事ではない
デイサービスの入浴介助は、身体を清潔に保つことが基本です。ただ、そのためには体調を見て、皮膚状態を確認し、安全に入浴できる方法を考えながら、その人に必要な介助を行わなければなりません。
身体的なきつさもあれば、事故への注意や入浴を嫌がる利用者への対応もあります。その一方で、一対一で利用者と話し、普段のフロアでは聞けないことを聞ける時間になることもあります。
利用者をお風呂に入れる仕事という一言だけでは、入浴介助の中身までは見えてきません。目的や流れ、大変さや良さまで含めて見ることで、入浴担当がどんな仕事なのかが見えてくると思います。


