デイサービスは介護業界の中でも、残業が少ない職場だと思われやすいです。実際、残業ゼロの職員が多いというデータを見ると、日勤だけで働きやすく、家庭とも両立しやすい職場という印象を持つ人も多いと思います。
ただ、現場を見てきた立場から言うと、デイサービスの残業は単純に「少ない」と言い切れるものではありません。残業の回数は少なくても、1回の残業が長くなりやすいことがありますし、表に出る残業時間だけでは見えない持ち帰り仕事やサービス残業も起こりやすいです。デイサービスの残業を正しく理解するには、数字だけでなく、どのような場面で残業が発生するのか、その仕組みまで見ておく必要があります。
デイサービスは残業が少ないと言われるが実態は単純ではない
デイサービスの残業は少ないと言われますが、その見え方には注意が必要です。たしかに、毎日のように残業が続く職場ばかりではありません。ただ、残業の出方が入所施設とは違うため、単純に「残業が少ない職場」と捉えると実態とズレます。
残業回数は少なくても1回の残業が長くなることがある
デイサービスは、その日の仕事が終われば帰れる仕事です。これは一見すると良いことですが、裏を返せば、その日の仕事を終わらせなければ帰れないということでもあります。アクシデントが起きた時や、送迎が押した時、日中に後回しになっていた業務が溜まっていた時には、一度の残業が長くなりやすいです。
実際、現場では毎日残業があるわけではなくても、何かが起きた日にまとまった残業になることがあります。なので、回数だけ見れば少なく見えても、働いている側の感覚としては「残業が少ない職場」と言い切れないこともあります。ここは数字だけでは見えにくい部分です。
入所施設とデイサービスでは残業の発生の仕組みが違う
特養や老健のような入所施設は、24時間365日で職員が交代しながら回しています。業務そのものが止まる仕事ではないので、シフトの切れ目でバトンタッチしやすく、1回の残業がそれほど長くならないことがあります。もちろん職場によりますが、仕事を次の職員に引き継ぎやすい仕組みはあります。
その点、デイサービスは利用者が帰れば一日が終わる形です。終わりがあるからこそ、その終わりまでに片づけるべきことが後ろに溜まりやすいです。この違いが、デイサービスでは残業回数は少なくても、1回の残業時間が長くなりやすい理由の一つです。
デイサービスで残業が起こりやすい基本の理由
デイサービスの残業は、特別なことが起きた時だけ発生するわけではありません。日々の仕事の流れそのものが、残業につながりやすくなっている職場もあります。特に利用者対応を優先する現場では、後でやれる仕事が後回しになりやすいです。
利用者対応を優先すると記録や片付けが後ろにずれやすい
デイサービスの仕事は、利用者と接することだけではありません。記録、掃除、洗濯、片付け、書類整理など、利用者対応以外の仕事もかなりあります。ただ、利用者が事業所にいる時間帯は、どうしても目の前の対応が優先になります。後でやっても支障がない仕事は、つい後回しになりがちです。
その結果、利用者を送り終えた後に、記録や片付け、事務作業が一気に残ります。本来なら送迎が終わったら簡単に片づけて帰れるはずなのに、そこからまた一仕事あるという流れになりやすいです。現場ではこれがよくあります。
雑務が慢性化すると残業前提の仕事の流れになってしまう
人手不足で日中をフル稼働で回している職場では、この後回しが一時的ではなく慢性化します。いつの間にか「雑務は利用者を送ってからやるもの」という空気ができてしまい、それが当たり前になっている事業所もあります。
そうなると、残業は突発的なものではなく、仕事の流れに組み込まれてしまいます。書類整理、レクリエーションの企画、制作物の準備まで、終業後にやるのが普通になっている職場では、残業を減らすのは簡単ではありません。これはデイサービス特有の残業の出方だと思います。
送迎はデイサービス特有の残業原因になりやすい
デイサービスの残業を考える時に外せないのが送迎です。送迎は単に車を運転する仕事ではなく、サービス提供時間の長さや、家族都合、交通状況まで影響するため、残業に直結しやすい業務です。
サービス提供時間が長い事業所ほど送迎で残業が発生しやすい
デイサービスのサービス提供時間は事業所によって違いますが、一般的には6時間から7時間、7時間から8時間、8時間から9時間といった枠が多いです。この提供時間には送迎時間が含まれていません。つまり、利用者が9時間滞在する事業所で、職員が9時間拘束、8時間勤務なら、そのままでは送迎時間がはみ出します。
もちろん実際は早番や遅番などで調整するのですが、それでも送迎が重くのしかかる事業所はあります。特に長時間型のデイサービスでは、送迎による残業がある程度前提になっていることも珍しくありません。逆に、6時間から7時間の比較的短時間のデイサービスでは、送迎まで含めても時間内に収まりやすく、残業ゼロの職場もあります。
家族都合や交通状況などで突発的な残業も起こる
送迎による残業というと、道が混んで遅れるという印象を持つかもしれませんが、実際はそれだけではありません。利用者家族がまだ帰宅していないため、もう少し遅く送ってほしいと言われることもあります。家族が仕事中で、電車の遅延などで帰りが遅れることもあります。
このような場面では、現場では予定どおりには終われません。時間どおりに送れば済む話ではなく、利用者を安全に自宅へ返すために待たなければならないこともあります。こうした突発的な事情が、デイサービスの送迎残業を長くしやすいです。
延長サービス対応の事業所では残業を前提にしている場合もある
私が働いていたデイサービスでは、8時間から9時間の枠を超える延長サービスにも対応していました。そのため、職員には一定時間分のみなし残業が最初から設定されており、してもしなくても固定で残業代が支払われる形でした。大きなアクシデントや欠員でもない限り、それを大きく超えることは少なかったですが、残業が発生する仕組み自体は最初からありました。
これはブラックというより、事業所の運営の仕組みとして残業込みで回していたということです。つまり、デイサービスの残業は「あるかないか」だけで見るのではなく、「最初から残業ありきの仕組みなのか」「それに対して賃金がどうなっているのか」まで見ないと実態は分かりません。
人手不足が残業を慢性化させる
デイサービスの残業は、結局のところ人手不足と切り離せません。日中にやるべきことが終わらない、送迎のためにシフトが崩れる、役割分担が偏る。こうしたことが積み重なると、残業が慢性化しやすくなります。
日中に書類や雑務が進まない職場は残業が増えやすい
人手不足の職場では、利用者がいる間は目の前の対応だけで手一杯になります。すると、書類や片付けのような業務は後回しになります。送迎後にやるしかなくなり、それが毎日続けば残業は当たり前になります。
しかも、デイサービスでは「利用者が帰った後にやる」というリズムが定着しやすいです。入所施設のように常に利用者がいる職場では、利用者がいる中で仕事を進める感覚が身につきますが、デイサービスは利用者が帰る区切りがある分、そこに仕事が溜まりやすいです。
送迎要員が足りないことでシフト調整が崩れることもある
人手不足というと、現場の中の仕事が大変というイメージを持つかもしれませんが、デイサービスでは送迎だけが苦しくなることもあります。中には送迎をしないパート職員が日中の現場の仕事を支えていて、フロア内の仕事はそこまで忙しくないのに、送迎担当が足りずに残業が出る職場もあります。
また、もともと早番・遅番で送迎時間をコントロールしていた事業所でも、人が足りなくなるとその組み方自体が崩れます。結果として、送迎で残業するしかなくなることがあります。デイサービスの人手不足は、現場全体の忙しさだけでは測れないと思っています。
会議・研修・突発対応で予定外の残業が増えることもある
デイサービスの残業は、日々の業務だけで生まれるわけではありません。送迎が終わってから始まる会議や研修、利用者の体調不良や家族対応など、予定外の要素でも残業は発生します。
送迎後の会議や研修が当たり前になっている職場もある
介護の仕事は、一度学べば終わりではありません。制度上必要な研修もありますし、定期的な確認や共有も必要です。ただ、日中は利用者がいるため、研修はどうしても送迎後になりやすいです。これだけでも残業の原因になります。
さらに会議もあります。利用者対応の質を高めるためのカンファレンスならまだ意味がありますが、中には会社の運営面に関する会議が必要以上に多い法人もあります。稼働率をどう上げるか、営業をどうするかといった話を、介護職員まで残って毎回聞く必要があるのかと感じる場面は実際にあります。会社と現場の温度差が大きい法人ほど、こうした残業が起こりやすいです。
利用者の体調不良や家族対応で予期せぬ残業が発生する
送迎でも少し触れましたが、利用者の体調不良などで予期せぬ対応が必要になることもあります。本来なら家族に対応してもらうべき場面でも、日中は家族が仕事に出ていて動けないことがあります。その場合、事業所によっては付き添いサービスのような形で通院介助まで対応していることもあります。
そうなると、家族が動ける時間までスタッフが対応しなければならず、予定外の残業になります。こうした残業は毎日ではないですが、起きた時の負担は小さくありません。デイサービスは時間が読みやすい仕事と思われがちですが、実際はこういう突発対応もあります。
デイサービスはサービス残業や持ち帰り仕事が起こりやすい
デイサービスの残業を考えるうえで、一番見落とされやすいのが表に出ない残業です。タイムカードに出る残業時間だけで判断すると、実態を見誤ることがあります。
レクの準備や制作物を自宅でやる持ち帰り仕事が起こりやすい
デイサービスでは、イベントの出し物やレクリエーションで使う道具の制作など、日中にやりにくい仕事があります。勤務後に事業所で残ってやることもできますが、家でやっても変わらない内容なら持ち帰る人もいます。実質的には仕事なのに、表面上は残業にならない形です。
これは家族との時間を優先したい人ほど起こりやすいです。夕食の時間に間に合わせたい、遅くまで職場に残れない、だから持ち帰って夜にやる。この流れは現場では珍しくありません。デイサービスの働きやすさの裏側として、この持ち帰り仕事は無視できないです。
パート職員は家庭都合で職場に残れず持ち帰りになりやすい
特に起こりやすいのがパート職員です。家に帰って夕食を作らなければいけない、家族の時間に合わせて動かなければいけない。そういう事情があると、たとえ残業代が出るとしても職場に残れないことがあります。
その結果、家でできる制作物や準備を持ち帰って対応する流れになりやすいです。事業所として減らしたいと思っていても、「残業代を出すから残ってやってください」で解決しない現実があります。ここもデイサービスの特徴の一つです。
同調圧力や職場習慣で残業をつけにくい事業所もある
現場に残って仕事をしていても、残業をつけにくい職場もあります。みんな残っているのに、誰も残業をつけていない。そういう空気があると、自分だけつけるわけにいかないという同調圧力が働きます。これでサービス残業が習慣化している事業所もあります。
一方で、現場をよく見ている法人では、15分でも30分でも残業したならしっかりつけるように言っているところもあります。逆に、「時間内に終わらなかったのは本人の問題」として残業代を払わないような法人も現実にはあります。こういう職場は避けた方がいいです。
相談員など一部の職種に残業が集中することもある
生活相談員のような役職は、利用者対応以外の仕事も多いです。契約、書類、連絡調整など、デイサービスが終わってから進めやすい業務が集中しやすいため、特定の人だけが長時間残業になることもあります。
事業所全体として見ると大きな残業がなくても、実際は一部の職種だけに負担が偏っている場合があります。残業の実態を見る時は、職場全体の雰囲気だけでなく、自分が担う職種でどうなのかまで見ておいた方がいいです。
残業が多い職場を避けるには何を見ればいいか
残業を減らすには会社側の改善も必要ですが、働く側が入職前に見極めることも大事です。デイサービスは事業所によって差が大きいので、求人票や見学で見える部分をしっかり確認した方がいいです。
サービス提供時間と送迎の組み方は必ず確認したい
まず見ておきたいのは、その事業所のサービス提供時間です。短時間型であれば、送迎まで含めても残業が少ない可能性が高いです。逆に、長時間型なら送迎がはみ出しやすく、残業が出る前提の職場もあります。
その時は、シフトでどう調整しているのかも見ておいた方がいいです。早番・遅番で回しているのか、固定残業を含めて運営しているのか。この違いは大きいです。残業を避けたい人には重要な確認ポイントです。
固定残業制かどうかは求人票の段階で見ておく
残業を気にするなら、求人票の月平均残業時間や固定残業の有無は必ず見ておくべきです。ハローワークの求人でも、平均残業時間の記載があります。事前に確認できる材料はあります。
固定残業があること自体が必ず悪いわけではありません。残業代がきちんと払われていて、本人もその働き方を望んでいるなら合う人もいます。ただ、「日勤で生活リズムを整えたい」と思ってデイサービスを選ぶ人には合わない可能性があります。大事なのは、自分の希望と合っているかです。
見学で現場の空気感と余裕の有無を確かめる
求人票だけでは分からないのが、現場の空気感です。人手不足でも落ち着いている事業所もあれば、ずっと求人を出していても余裕を持った体制で回しているところもあります。私は実際に、「これでまだ募集するのか」と思うくらい落ち着いている事業所を見たことがあります。
求人が出ているからといって必ずしも働きづらいとは限りません。人を厚めに採って次の展開を考えている事業所もありますし、上を育てるために継続的に採用しているところもあります。だからこそ、見学をして実際の雰囲気を見ることが大切です。
改善されないなら転職も選択肢に入れていい
残業が多い、サービス残業があるという現実があるなら、まずは法人側に伝えて改善を求めることは大事です。ICT化、無駄な会議の削減、人員配置の見直しで改善できる部分はあります。紙記録をタブレット入力に変えるだけでも、慢性的な入力残業が減る職場はあります。
ただ、それでも変わらない職場はあります。サービス残業が当たり前、残業をつける空気がない、現場から遠い法人で実態が届かない。そのような職場なら、我慢し続ける必要はありません。転職を考えるのは自然なことです。
デイサービスの残業は悪ではなく大事なのは中身である
デイサービスの残業は、あるかないかだけでは判断できません。大事なのは、その残業がどういう中身なのか、自分の働き方に合っているのかです。
定時で帰りたい人は残業の少ない事業所を選ぶべき
日勤で生活リズムを整えたい、家庭と両立したい。そう思ってデイサービスを選ぶ人は多いです。その場合は、残業の少ない事業所を選ぶべきです。サービス提供時間が短めで、送迎まで含めて時間内に収まりやすい職場を選ぶだけでもかなり違います。
デイサービスは本来、夜勤がなく、生活のリズムを整えやすい魅力があります。その魅力を活かしたいなら、残業の出方まで見て職場を選ぶ必要があります。
残業代が適正に出るなら働き方として合う人もいる
一方で、残業そのものが悪いとは私は思っていません。夜勤がない分、給料水準が低くなりやすいデイサービスでは、残業代が収入の上乗せとして魅力になる人もいます。独身でもっと稼ぎたい人などは、あえて残業ありで、しかもきちんと残業代が払われる職場を選ぶのも一つの考え方です。
大事なのは、予定していない残業を押し付けられることではなく、自分が理解して選んでいるかどうかです。残業があっても納得できる仕組みなら、それが合う人もいます。
サービス残業がある職場は我慢せず見切りをつけることも必要
問題なのは、予定していない残業が続くことや、サービス残業があることです。特にサービス残業は良くありません。法人が意図していない隠れたサービス残業も含めると、デイサービスはレクリエーションの準備や持ち帰り仕事などで、それが起こりやすい環境です。
デイサービスは良い仕事ですし、家庭と両立しやすい魅力もあります。ただ、その魅力が成り立つのは、働き方がきちんと整っている職場であればこそです。残業の有無だけでなく、その中身を見て、自分のライフスタイルに合う職場を選ぶことが大切です。もし今の職場がそれに当てはまらないなら、無理に我慢せず、環境を変えることも前向きな選択だと思います。