デイサービスで働いていると、「もう辞めたい」と感じる場面はあります。人間関係がつらい、送迎が負担、レクリエーションが苦手、給料や働き方に不安があるなど、理由は一つではありません。
ただ、ここで大切なのは、辞めたい理由が「デイサービスという仕事そのもの」にあるのか、「今の職場環境」にあるのかを分けて考えることです。そこを混同してしまうと、本当は職場を変えれば続けられた人まで、デイサービス自体を嫌いになってしまうことがあります。
僕は介護職員、管理者、法人の経営側という立場でデイサービスに関わってきました。その中で、辞めたい理由には現場ならではの共通点があると感じています。
この記事では、デイサービスを辞めたいと感じる理由を、現場の実感に沿って一つずつ見ていきます。最後には、辞める前に相談してほしい理由と、それでも変わらない場合に環境を変える考え方についても書いていきます。
デイサービスを辞めたい理由で多い人間関係
デイサービスを辞めたい理由として、まず多いのは人間関係です。これは介護職全体にも言えることですが、デイサービスでは特に職員同士の関わりが働きやすさに強く影響します。
利用者対応は一人で完結するものではなく、職員同士で連携しながら進めます。そのため、誰か一人とだけうまくやれればいいという仕事ではありません。
チームで動くため職員全員との関わりが避けられない
デイサービスは、常に職員同士で声を掛け合いながら動く仕事です。利用者の状態、送迎時間、入浴の順番、トイレ誘導、レクリエーションの流れなど、細かい情報共有が毎日のようにあります。
そのため、一部の職員とだけ仲良くしていれば働きやすい、という形にはなりにくいです。現場全体の空気が悪ければ、それだけで仕事中の負担は増えます。
特別に大きなトラブルがなくても、苦手な人が一人いるだけで、毎日の出勤が重くなることもあります。デイサービスは職員同士の距離が近い分、人間関係の小さなズレが積み重なりやすい職場です。
先輩後輩・年齢差・雇用形態で距離感が難しくなる
介護の現場では、先輩後輩の関係も少し複雑です。一般的な会社では、年齢が上の人や長く勤めている人が先輩という感覚になりやすいですが、介護ではそう単純ではありません。
介護業界は転職が珍しくないため、介護職としては経験が長いけれど、その会社では後輩という人もいます。反対に、会社では先輩だけれど介護経験は浅い人もいます。年齢、介護経験、在籍年数が一致しないことは普通にあります。
さらに、デイサービスではパート職員と正社員が同じ現場で働くことも多いです。先輩介護職員はパート、後輩介護職員は正社員という関係も起こります。役職や雇用形態だけで上下を決められないため、距離感が難しくなることがあります。
もちろん、年上だから偉い、先輩だから偉いという考え方が良いわけではありません。ただ、現場ではそうした感覚が残っている人もいます。そこに気を使い続けることで、人間関係に疲れてしまう人もいます。
介護の考え方の違いが人間関係の衝突につながる
介護には、これが絶対に正しいと言い切れない場面が多くあります。どこまで手伝うのか、どこから見守るのか、声かけをどうするのか、利用者の気持ちをどう受け止めるのか。現場では、日々そうした判断が続きます。
どちらの考え方も間違っていないのに、職員同士の価値観が合わずに衝突することがあります。自立支援を重視する職員と、安全を優先して介助したい職員では、同じ場面でも判断が変わります。
その違いを話し合える職場であれば良いのですが、意見を言いにくい空気があると、どちらかが我慢する形になります。こうした小さな我慢が積み重なると、デイサービスを辞めたい理由につながっていきます。
デイサービスの人間関係は職場の外にも広がっている
デイサービスの人間関係は、同じ職場の職員だけで終わりません。デイサービスは在宅生活を支えるサービスの一つなので、利用者本人、家族、ケアマネジャー、他の介護サービスとも関わります。
入所施設と違い、利用者は自宅から通ってきます。そのため、家族や外部の関係者との距離が近く、職員はその対応にも気を使うことになります。
利用者や家族との関わりが負担になることもある
デイサービスでは、利用者本人との関係だけでなく、家族との関わりも多くあります。特に送迎時には、家族と直接顔を合わせる機会があります。
その場で体調の変化を伝えたり、家での様子を聞いたり、連絡帳では伝わりにくいことを確認したりします。うまく関係が築けている場合は大切な連携になりますが、家族対応が苦手な人にとっては負担になることもあります。
家族からの要望が多い場合や、現場で対応できる範囲を超えたことを求められる場合もあります。職員として丁寧に対応したい気持ちはあっても、それが続くと精神的に疲れてしまうことがあります。
ケアマネや他サービスとの連携にも気を使う
利用者はデイサービスだけを利用しているとは限りません。訪問介護、訪問看護、福祉用具、ショートステイなど、複数のサービスを使っていることもあります。
その場合、デイサービスだけで完結するのではなく、その利用者を支える一つのチームとして、他の会社とも連携を取る必要があります。ケアマネジャーへの報告や、他サービスとの情報共有も大切になります。
これは在宅サービスであるデイサービスならではの特徴です。利用者の生活全体を見て関わる必要があるため、外部との人間関係にも気を使います。現場の中だけで精一杯のときには、この外部対応が負担に感じることもあります。
カスタマーハラスメントが辞めたい理由になる場合もある
人間関係の問題は、単なる相性だけではありません。利用者や家族からの強い言動、無理な要求、感情的なクレームなどが続けば、カスタマーハラスメントとして考えるべき場面もあります。
デイサービスでは、家族と接する機会が多いため、外部からのストレスを受けやすい面があります。送迎時に毎回きつい言い方をされる、現場では対応できないことを強く求められる、職員個人に責任を押し付けられるようなことがあれば、働く側の負担は大きくなります。
こうした問題は、職員個人だけで抱えるものではありません。上司や会社が間に入り、現場を守る必要があります。そこが機能していない職場では、辞めたい気持ちが強くなるのは自然なことです。
上司や職場体制に問題があると、辞めたい気持ちは強くなる
人間関係や業務の負担があっても、相談できる上司や管理者がいれば、改善できる可能性があります。反対に、上司や職場体制が弱いと、小さな不満が大きな退職理由に変わっていきます。
デイサービスは小規模な法人が運営していることも多く、管理者や経営側の考え方が現場に強く影響します。だからこそ、上に立つ人が現場を理解しているかどうかは非常に大きいです。
相談しても伝わらない上司では現場は疲弊する
本来、職員が困ったときに相談する相手は上司です。人間関係、業務量、利用者対応、家族対応など、現場だけでは解決しにくい問題はたくさんあります。
しかし、相談しても話を聞いてもらえない、聞いても改善につながらない、逆に職員側の我慢を求められる。そのような上司では、職員はだんだん相談すること自体を諦めてしまいます。
「言っても無駄」と感じた時点で、気持ちは退職に向かいやすくなります。現場の悩みを受け止める力が上司にないと、職員は一人で問題を抱えることになります。
現場を知らない管理者が仕切ると不満が大きくなる
僕自身は、専務取締役という立場でありながら、管理者兼介護職員として現場にも出ていました。利用者と一緒にレクリエーションの時間を過ごし、排泄介助も他の介護職員と変わらない頻度で行っていました。
そのため、現場で大変な仕事や職員の負担は、肌で感じていたつもりです。もちろん、それでもすべてを理解できていたとは言い切れませんが、少なくとも現場の大変さを自分の目で見る立場にはいました。
一方で、法人によっては、管理者という名前だけで現場にはほとんど入らない代表や上司もいます。現場を知らないまま現場を仕切ると、職員の悩みが軽く扱われてしまうことがあります。そうなると、職員は「この人に言っても伝わらない」と感じやすくなります。
特に、介護職員から一つずつ経験を積んできた管理者と、現場経験が薄いまま上にいる人では、職員への接し方に差が出ることがあります。本人に悪気がなくても、現場から見れば負担になっている場合があります。
送迎・レクリエーション・介護負担が合わずに辞めたくなる人もいる
デイサービスには、デイサービス特有の業務があります。特に送迎とレクリエーションは、向き不向きが出やすい仕事です。
介護そのものが嫌いではなくても、こうした業務が強い負担になり、辞めたい理由になることがあります。さらに、身体的な介護負担や責任の重さも見落とせません。
送迎業務は責任が重く、運転が苦手な人には大きな負担になる
デイサービスでは、送迎業務が発生します。特に小規模のデイサービスでは、介護職員が運転することも珍しくありません。
利用者を乗せて運転する以上、ただ車を運転するだけではありません。時間を守る必要があり、乗降時の安全確認もあり、家族対応もあります。事故への不安もあります。
運転が苦手な人にとって、送迎は大きなストレスになります。介護の仕事自体は続けたいのに、送迎が負担で辞めたいと感じる人がいるのは、現場感覚としても理解できます。
レクリエーションや雰囲気作りがストレスになることもある
デイサービスでは、利用者に楽しんでもらうためのレクリエーションや雰囲気作りも求められます。これが得意な人もいれば、かなり苦手に感じる人もいます。
年齢差が大きい利用者に対して、何をすれば喜んでもらえるのかを考えるのは簡単ではありません。人前で話すこと、場を明るくすること、盛り上げることに強い苦手意識がある人もいます。
デイサービスは、ただ介助だけをしていればいい仕事ではありません。利用者が一日をどう過ごすかにも関わるため、この部分が合わないと精神的な負担になりやすいです。
腰痛や体力面の限界で続けられない人もいる
デイサービスは施設介護より身体的に楽だと思われることがあります。確かに夜勤がないことや、入所施設とは違う部分もあります。
しかし、介助がないわけではありません。移乗、排泄介助、入浴介助、歩行介助など、身体を使う場面は日常的にあります。利用者は背の低い人も多く、中腰での介助が続くこともあります。
女性だけでなく、男性職員でも腰痛に悩む人は多いです。仕事が嫌いではなくても、身体がついていかないことで続けられない人もいます。
命を預かる責任が精神的なプレッシャーになる
介護は、利用者の命を預かる仕事です。デイサービスでも、急な体調変化、転倒、誤嚥、送迎中の事故など、注意しなければならない場面は多くあります。
医療職ではなくても、介護職として気づかなければならない変化があります。顔色、歩き方、食事量、排泄の様子、いつもと違う反応など、現場では細かい観察が求められます。
知識不足への不安や、判断への迷いが続くと、精神的なプレッシャーになります。責任感がある人ほど、自分を追い込んでしまうこともあります。
ハラスメントや古い感覚の職場は我慢しなくていい
デイサービスを辞めたい理由の中には、我慢で済ませてはいけないものもあります。パワハラやセクハラは、単なる人間関係の悩みではなく、職場環境として考えるべき問題です。
特に難しいのは、本人に悪気がない場合です。場を盛り上げているつもりでも、受ける側が苦痛を感じているなら、職員にとっては大きな負担になります。
悪気のない言動でも職員の負担になることがある
僕が関わっていた職場では、親睦会が定期的に行われていました。職員同士で仲良く進められるときは良かったのですが、会社の経営陣が参加すると空気が変わることがありました。
本人は盛り上げようとしていたのかもしれませんが、昔の感覚でセクハラと受け取られてもおかしくない話題を出し、職員が気を使って合わせている場面がありました。
職員が場の空気を壊さないようにやんわり話をそらしたり、先輩職員がうまく受け流したりしていましたが、それが「盛り上がっている」と勘違いしているようでした。
これは介護業務そのものの話ではありませんが、職場に関わる人間関係の負担として、辞めたい気持ちにつながることはあります。
仕事外の場が苦痛なら参加しない選択肢もある
実際に、こうした空気を避けるために、経営側の人間を参加させず、現場の職員だけで親睦会を行っていた事業所もありました。
その事業所の管理者は、後から会社に費用を請求する形を取っていました。経営側から見れば納得しにくい部分もあったと思いますが、現場の職員が気を使わずに参加できる場を作ろうとしていたのだと思います。
職場内の人間関係は悪くないのに、親睦会など限られた場面だけが苦痛なのであれば、参加しないという選択肢もあります。仕事ではない場まで無理をして、会社そのものが嫌になってしまう必要はありません。
もちろん、自分だけ不参加になることで周囲に誤解されることもあります。そのため、信頼できる職員には事情を共有しておくことも大切です。ただ、本来は上司や経営側が、職員に余計な負担を与えていないかを考えるべきです。
給料・働き方・キャリアの変化で辞めることもある
デイサービスを辞める理由は、つらいからだけではありません。給料、働き方、家庭環境、キャリアの変化によって、今の職場を離れることもあります。
こうした退職は、必ずしも後ろ向きではありません。今の生活や将来を考えた結果、別の働き方を選ぶことも自然なことです。
夜勤がない分、収入面で不安を感じやすい
デイサービスは日勤中心の仕事です。生活リズムが作りやすい一方で、夜勤手当がありません。
そのため、入所施設などと比べると、給与が上がりにくいと感じる人もいます。特に家族ができたり、子どもにお金がかかるようになったりすると、収入面の不安は大きくなります。
仕事にやりがいがあっても、生活が成り立たなければ続けることは難しくなります。給料を理由に転職を考えることは、決しておかしなことではありません。
家庭環境の変化で働き方を変えたくなることがある
デイサービスでは、パート職員も多く働いています。子どもが小さい時期は、家庭を優先しながら短時間勤務や週2回、週3回で働く人もいます。
その働き方が、その時期の生活に合っていれば問題ありません。しかし、子どもの手が離れてくると、もっと働きたい、収入を増やしたい、正社員になりたいと考えるようになることがあります。
これは、今の職場が嫌だから辞めるという話ではありません。生活の段階が変わったことで、働き方も変えたくなるということです。
パートから正社員になりたくても今の職場で受け入れられない場合がある
小さなデイサービスでは、パート職員をそのまま正社員として受け入れることが難しい場合もあります。法人の規模、職員配置、人件費、既存の正社員とのバランスなどが関係するからです。
実際に、僕の職場でもパート職員から「仕事の量を増やしたいが、残業はできない」という相談を受けたことがありました。その職場では、正社員は皆さん残業している現状がありました。
さらに、みなし残業として残業時間を手当に含めて支払っている仕組みがあったため、その条件のまま正社員にするのは難しい判断になりました。既存の正社員との公平性も考えなければならなかったからです。
キャリアアップのための退職は前向きな選択でもある
退職には、キャリアアップという前向きな理由もあります。生活相談員を目指したい、ケアマネジャーを目指したい、もっと違う経験を積みたいという理由で職場を変える人もいます。
現場としても、そうした退職は前向きに送り出せることがあります。もちろん人手不足の中で辞められるのは大変ですが、その人の将来を考えれば、応援したい気持ちもあります。
デイサービスを辞める理由は、必ずしも悪いものだけではありません。問題は、自分がなぜ辞めたいのかを見失わないことです。
辞めたいと感じたら、まず原因を分けて相談してみる
辞めたいと感じたときは、すぐに「自分にはデイサービスが向いていない」と決めつけない方がいいです。原因が仕事内容なのか、人間関係なのか、職場体制なのか、働き方なのかで、取るべき行動は変わります。
特に、働き方や条件の問題は、相談することで変わる場合があります。最初から無理だと思い込んでしまうと、辞めなくてもよかった職場を離れてしまうこともあります。
最初から無理だと決めつけず会社に相談する意味はある
介護職は人手不足です。会社側も、頑張ってくれている職員にできれば続けてほしいと考えていることが多いです。
もちろん、すべての会社が柔軟に対応してくれるわけではありません。現場の職員一人のありがたみを分かっていない代表や上司もいるでしょう。
それでも、相談してみなければ分からないことはあります。特に、今の職場が嫌いではない、仕事内容にもやりがいを感じているという場合は、辞める前に一度話してみる価値があります。
準正社員のような中間的な働き方で続けられた事例
先ほどのパート職員の相談では、正社員として受け入れることは難しい状況でした。残業ができない条件で、既存の正社員と同じ扱いにすることは公平性の面でも難しかったからです。
そこで、パートと正社員の間にあたる準正社員という立場を作りました。正社員ほどではないけれど、パートより待遇が良く、手当も準正社員用に移行する形です。
その結果、その職員はその後も長く働いてくれました。もし最初から「正社員になれないなら辞めるしかない」と決めつけていたら、その人は職場を離れていたかもしれません。
相談しても変わらないなら環境を変える選択も必要になる
相談しても何も変わらない職場もあります。話を聞いてくれない、改善する気がない、職員に我慢だけを求める。そういう職場で無理を続ける必要はありません。
ハラスメントがある場合や、心身に限界が来ている場合も同じです。相談することは大切ですが、相談したからといって必ず我慢し続けなければいけないわけではありません。
大切なのは、辞めたい理由を一度言葉にしてみることです。そのうえで、改善できる問題なのか、環境を変えるべき問題なのかを考えることです。
デイサービスを長く続けるには、我慢よりも環境選びが大切
デイサービスは、本来やりがいのある仕事です。利用者が自宅で暮らし続けることを支え、家族の介護負担を軽くし、生活の中に通う場所を作る役割があります。
ただし、仕事に魅力を感じていても、職場環境が合わなければ続けることは難しくなります。人間関係、上司の理解、送迎やレクリエーションの負担、働き方の条件が合わないままでは、やりがいを感じる前に疲れてしまいます。
デイサービスが合わないのではなく、今の職場が合わない場合もある
辞めたいと思ったときに、「自分はデイサービスに向いていない」と決めつける必要はありません。苦手な業務があったとしても、職場の支え方によって負担は大きく変わります。
送迎が苦手でも、役割分担ができている職場なら続けやすい場合があります。レクリエーションが苦手でも、一人に任せきりにせず、職員同士で支え合える職場なら負担は軽くなります。
問題は、デイサービスそのものではなく、今の職場で相談できないことや、上司や会社に理解してもらえないことにあるかもしれません。そこを分けて考えることが大切です。
続けたい気持ちがあるなら、働く環境を変える選択もある
会社や上司に相談しても改善されないのであれば、無理に今の職場にこだわる必要はありません。デイサービスに魅力を感じているなら、新しい職場環境で続ける選択もあります。
同じデイサービスでも、管理者の考え方、職員同士の関係、業務の分担、家族対応の支援体制は職場によって違います。環境が変われば、同じ仕事でも感じる負担は変わります。
辞めたい気持ちは、ただ我慢するものではありません。今の職場で改善できるのか、それとも環境を変えた方がいいのかを考えるきっかけです。デイサービスを長く続けたいなら、自分が無理なく働ける職場を選ぶことも大切です。