デイサービスで転職を考え始めたとき、多くの人が最初にやってしまうのが、いきなり求人を見始めることです。「休みが多そう」「給料が少し高い」「家から近い」といった条件に目が向き、その場その場で良さそうに見える職場を探してしまいます。
ただ、採用する側として面接をしてきた経験から見ても、転職で本当に大事なのは最初に求人を見ることではありません。先にやるべきなのは、自分の中の「転職の軸」をはっきりさせることです。
デイサービスは同じ介護職でも事業所ごとの差がかなり大きい分野です。どこでも同じように見えて、実際は送迎の負担も違えば、レクリエーションの比重も違うし、人間関係の濃さ、設備の整い方、会社の現場理解、働き方までかなり違います。だからこそ、軸がないまま転職すると、次もまた「思っていたのと違った」となりやすいのです。
この記事では、デイサービスで転職するときに、なぜ最初に軸を決めることが大切なのか、そして何を基準にその軸を整理していけばいいのかを、現場・管理・採用の経験を踏まえて整理していきます。
デイサービスの転職で最初に決めるべきなのは「応募先」ではなく「軸」
デイサービスの転職では、最初に「どこを受けるか」を決める前に、「何を基準に選ぶか」を決めることが大切です。ここが曖昧なままだと、求人を見れば見るほど迷いやすくなります。
デイサービスは同じように見えて特徴が大きく違う
デイサービスと一言でいっても、中身はかなり違います。小規模で家庭的な雰囲気の職場もあれば、大規模で役割分担がはっきりしている職場もあります。レクリエーションに力を入れているところもあれば、リハビリ特化型のように機能訓練が中心のところもあります。
僕自身、管理者として複数の事業所を見てきた中で、「デイサービスならどこでも同じ」と思って入るとずれやすいと感じてきました。同じ介護職でも、負担に感じることや、やりがいを持てる部分は事業所ごとにかなり違います。
たとえば送迎一つでも、小規模では介護職員が運転することが多い一方で、大規模では運転手がいて、介護職員は同乗中心という職場もあります。この違いだけでも、合う・合わないは大きく変わります。
軸がないまま探すと転職活動はすぐにぶれる
軸が決まっていないまま求人を見ると、そのたびに気になる点が変わってしまいます。「休みが多いから良さそう」「給料が高いから魅力的」「雰囲気が良さそう」と揺れてしまい、なかなか決め切れません。
現実には、すべての条件がそろった職場は多くありません。だからこそ、基準がないまま探すと、どの求人も良く見えて迷いやすくなります。最初に軸を持つことは、転職活動をぶらさず、合わない職場を選んでしまう失敗を防ぐためにも大切です。
転職の軸は「辞めたい理由」から見えてくる
転職の軸というと、何か立派な将来像を考えないといけないように感じるかもしれませんが、実際はもっと現実的なところから考えた方が整理しやすいです。それが、今の職場を辞めたい理由です。
まずは今の職場で何が一番つらいのかを言葉にする
転職を考えるとき、気持ちだけで「もう辞めたい」となっていることはよくあります。ただ、その状態のまま次を探し始めると、結局また同じような理由で悩むことになりやすいです。だからまずは、自分が今の職場の何に一番負担を感じているのかをはっきりさせる必要があります。
送迎がつらいのか、レクリエーションがしんどいのか、人間関係なのか、会社が現場を分かってくれないことなのか、体力面なのか、書類なのか。ここが曖昧なままだと、転職の軸も曖昧なままになります。
実際、現場で相談を受けるような場面でも、「とにかく今の職場が嫌だ」という状態から話が始まることは多いです。ただ、少し掘り下げていくと、「嫌なのは介護の仕事そのものではなく、送迎の負担だった」「レクを毎日考えるのが苦痛だった」「少人数の人間関係がきつかった」というように、原因はかなり具体的だったりします。
不満の原因を整理すると次に選ぶべき職場の条件が見えてくる
辞めたい理由が見えてくると、次に選ぶべき職場の条件もかなりはっきりしてきます。ここで大事なのは、「今の職場の不満」をそのまま「次に求める条件」に変換することです。
送迎が負担なら大規模デイや運転手配置のある職場が候補になる
送迎が負担なら、次の職場ではそこを重視した方がいいです。小規模では介護職員が送迎を担うことが多い一方で、大規模では運転手がいて、介護職員は運転しない職場もあります。
送迎に不安がある人にとって、この違いはかなり大きいです。送迎そのものが合わないなら、入所施設などデイサービス以外の介護職も視野に入ります。
レクリエーションが負担ならリハビリ特化型という選択肢がある
レクリエーションが苦手だったり、毎日のアイデア出しが負担だったりするなら、リハビリ特化型は候補になります。こうした事業所は体操や機能訓練中心のことが多く、いわゆる楽しませるためのレクの比重が下がります。
内容も理学療法士や作業療法士が中心に考えることがあるため、介護職員の負担が軽くなる場合があります。
人間関係や現場への理解度は事業所の規模や距離感で変わる
人間関係で悩んでいるなら、「小さい職場の方が良い」と単純には言えません。少人数は温かさもありますが、合わない人がいると関係が濃くなりやすい面もあります。
逆に大規模は人が多い分、距離を取りやすいこともあります。一方で、現場の声が届きやすいのは小規模な職場の方が多く、このあたりは何に悩んでいるかで向き不向きが変わります。
体力面や書類負担は設備やICT環境を見ると判断しやすい
体力面がきついなら、入浴設備や動線などを見ることが大切です。書類負担が重いなら、紙中心なのか、ICT化が進んでいるのかで働きやすさは変わります。
フランチャイズ系は仕組みやICT導入が比較的整っていることもあるため、こうした視点で職場を見るだけでも選びやすくなります。
デイサービスの転職軸は大きく4つに分けて考えると整理しやすい
転職の軸を考えるとき、あれもこれもと条件を並べ始めると、逆に整理しにくくなります。そんなときは、まず大きな柱で分けて考えると頭の中がかなりすっきりします。
ケアの質ややりがいを軸にする
一つ目の柱は、仕事の中身そのものです。どんなケアをしたいのか、どんなやりがいを感じながら働きたいのかという視点です。楽しいレクリエーションを重視したいのか、リハビリ色の強いサービスに関わりたいのか、利用者さんとの関わりの深さを大切にしたいのか、このあたりは人によってかなり違います。
この軸を大事にする人は、多少忙しくても、自分が納得できるケアや仕事の内容で働きたいという思いが強いです。だから、単に休みや給料を見るだけではなく、その事業所がどんなサービスを大切にしているのかを見る必要があります。
働きやすさや労働環境を軸にする
二つ目は、働く環境そのものです。設備が整っているのか、記録はICT化されているのか、研修体制はあるのか、動線は働きやすいのか。こういった部分は、毎日のしんどさに直結します。
やりがいとは似ているようで別です。やりがいがあっても、毎日無駄に疲弊するような環境なら長く続きません。逆に、仕事の中身が極端に理想ではなくても、働く環境が整っていることで安定して続けられることもあります。ここを軽く見ると、転職後に「想像以上に働きづらい」となりやすいです。
ワークライフバランスを軸にする
三つ目は、仕事と私生活のバランスです。残業が少ないか、休みが取れるか、日曜日が休みか、家庭と両立しやすいか。この軸を重視する人はかなり多いと思います。
特にデイサービスは、入所施設に比べると夜勤がないことが大きな特徴です。そのため、生活リズムを崩したくない人や、家族との時間を大切にしたい人にとっては、かなり大きな選択理由になります。逆に、同じ介護職でも入所施設に行けば夜勤が前提になる職場は多いため、自分が求める生活とのバランスを考えることはかなり重要です。
給与や待遇を軸にする
四つ目は、やはり給与や待遇です。月給がどれくらいか、ボーナスはどうか、手当はあるか、一定水準以上の収入が確保できるか。この部分を最優先に考えるのも、もちろん間違いではありません。
生活がある以上、お金は大事ですし、どれだけやりがいがあっても、待遇が低すぎれば続けるのは難しくなります。だからこそ、「給料のために多少は目をつぶれるのか」「いくら以下なら無理なのか」を自分の中で明確にしておくことは大切です。
軸を決めるときは「全部ほしい」ではなく優先順位まで決める
転職の軸を考えるときに大事なのは、条件を並べることではなく、その中で何を一番優先するかをはっきりさせることです。ここが曖昧なままだと、求人を見るたびに気になる点が変わり、判断がぶれやすくなります。
譲れない条件を一つ決めると判断しやすくなる
まず決めておきたいのは、「これだけは外せない」という条件です。それが休みなのか、給料なのか、やりがいなのか、働きやすさなのかをはっきりさせるだけで、職場選びの基準ができます。
たとえば「日曜日休みは絶対に譲れない」と決めているなら、その条件に合わない職場は早い段階で外せます。「送迎を自分で運転しないことを優先したい」と決めているなら、見るべき求人の特徴も自然と絞られてきます。こうして最優先の条件を決めることで、求人に振り回されにくくなります。
優先順位がないと求人を見るたびに迷いやすくなる
転職で迷いやすいのは、どの条件も大事に見えてしまうからです。休みも欲しいし、給料も下げたくないし、人間関係も良い方がいいし、やりがいも捨てたくない。そう考えるのは自然ですが、そのままだと決め手がなくなります。
実際には、「休みが整っていれば多少給料は許容できるのか」「給料を優先するなら忙しさは受け入れられるのか」といった整理が必要です。この順番が決まっていないと、良さそうな求人を見るたびに気持ちが揺れ、応募する段階でも決め切れなくなります。
理想を追うより自分に合う基準で選ぶ方が現実的
もちろん、休みも多くて、給料も高くて、人間関係も良くて、やりがいもあって、設備も整っている職場があれば理想です。ただ、現実にはそこまで条件がそろった職場は多くありません。
しかも、そういう職場は働いている人も辞めにくいため、募集が少ないこともあります。だからこそ、全部がそろっているかどうかで探すのではなく、自分が一番大事にしたい軸に合っているかで選ぶ方が、転職は進めやすくなります。
軸が決まってから求人を見ると職場探しは一気に進めやすくなる
転職の軸が固まると、求人探しそのものがかなり楽になります。見るポイントが定まるからです。
軸がないと求人を見るたびに判断基準が変わる
軸がない状態では、求人を見るたびに評価するポイントが変わってしまいます。今日は給料を見て、次は休みを見て、その次は雰囲気を気にして、結局どれを優先すればいいのか分からなくなります。
でも軸が決まっていれば、まずその条件に合っているかどうかで見られます。合っていなければ候補から外せるし、合っていれば次に他の条件を見ればいい。この順番になるだけで、探すスピードも精度もかなり上がります。
転職サイトの絞り込み検索も軸があると使いやすい
転職サイトを使う場合も、軸がある人の方が圧倒的に探しやすいです。条件の絞り込みをかけるときも、「何を残して何を切るか」が明確だからです。
休み重視なら休日条件を優先して絞れますし、リハビリ特化型を探すならサービスの特徴で見られます。給料重視なら最低ラインを先に決めておけます。こういう使い方ができると、求人に振り回されるのではなく、自分の基準で求人を選べるようになります。
面接を申し込む段階でも軸は判断基準になる
面接を受ける職場を決める段階でも、軸はかなり重要です。条件が何となく良いから応募するのではなく、「自分の軸に合っているから応募する」という形になると、面接でも確認すべきポイントがはっきりします。
たとえば働きやすさ重視なら、記録方法や動線、設備、残業の実態を確認するべきです。ワークライフバランス重視なら、休日の取り方や勤務時間の現実を見るべきです。軸があると、面接はただ受かるための場ではなく、自分に合うか確認する場として使いやすくなります。
介護職は軸が決まると情報収集しやすい業界でもある
介護職の良いところは、一般企業に比べて事業所の情報が比較的見やすいことです。もちろん全部が分かるわけではありませんが、軸が決まっていれば調べる材料はかなりあります。
介護サービス情報公表システムで見えること
たとえば厚生労働省の介護サービス情報公表システムでは、その事業所の基本情報や運営状況、取り組みなどを確認できます。何も知らずに求人票だけで判断するより、かなり参考になります。
デイサービスは外から見るだけでは違いが分かりにくいですが、こうした公的な情報を見ることで、少なくともどんな体制で運営しているのかを一定程度つかむことができます。軸がある人ほど、この情報を活かしやすいです。
研修体制やサービスの質への取り組みは軸の判断材料になる
たとえば、教育や研修を重視したい人にとっては、従業者への研修がどの程度行われているかは大きな判断材料になります。サービスの質の確保にどう取り組んでいるかも、その職場の姿勢を見るうえで参考になります。
やりがいやケアの質を大切にしたい人なら、こういう部分はかなり重要です。逆に、とにかく働きやすさを重視する人でも、仕組みが整っている職場かどうかを見る材料にはなります。求人票の言葉だけで判断するより、ずっと現実的です。
介護職員処遇改善加算など待遇面の見方も軸と結びつけられる
給与や待遇を重視するなら、処遇改善加算のような部分にも目を向けるといいです。介護職はこうした制度がある分、職員にどの程度還元しようとしているかが見えやすい面があります。
もちろん、それだけで給料のすべてが決まるわけではありませんが、どのランクを取得しているかを見ることは一つの参考になります。一般企業だと内部の待遇改善の姿勢は外から見えにくいですが、介護職は「介護サービス情報公表システム」で調べられます。この情報の透明性は、介護職の転職では強みになります。
転職を急ぐ前に「これだけは譲れない軸」を固めることが失敗を防ぐ
転職活動では、早く今の職場を離れたい気持ちが強くなることがあります。その気持ちはよく分かります。ただ、その焦りが強すぎると、軸がぶれて転職を繰り返しやすくなります。
早く辞めたい気持ちだけで動くとまた同じ失敗をしやすい
今の職場がつらいと、「とにかく次を早く決めたい」という気持ちが前に出ます。すると、本来なら譲れないはずの条件まで後回しになってしまい、「今より少しマシそうだから」と決めてしまうことがあります。
でも、その状態で入った職場が自分の軸に合っていなければ、また同じように悩むことになります。転職は今の職場を辞めるためだけにするものではなく、次は長く続けられる場所を見つけるためにするものです。ここを見失うと、転職回数だけが増えてしまいます。
転職の本当の目的は長く続けられる職場を見つけること
転職の目的は、「今の会社を辞めること」ではありません。本当の目的は、自分に合った職場を見つけて、これから先を安定して働いていくことです。ここがはっきりしている人ほど、条件に流されにくくなります。
デイサービスは事業所ごとの差が大きいからこそ、自分に合う職場に出会えれば働きやすさはかなり変わります。逆に、何となく選ぶと、同じデイサービスでも全然違うしんどさに当たることがあります。だから最初の軸が大事なのです。
まずは「これだけは譲れないもの」から具体化していく
転職の軸を考えるとき、最初から完璧に整理しようとしなくても大丈夫です。まずは「これだけは譲れない」というものを一つ具体化するところから始めればいいと思います。
送迎をしたくないのか、レクリエーションの負担を減らしたいのか、休みを確保したいのか、給料を上げたいのか、現場理解のある職場で働きたいのか。その一つが見えてくるだけで、転職活動はかなり変わります。
デイサービスの転職は、ただ求人を比べることが大事なのではありません。自分が何を大事にして働きたいのかをはっきりさせ、その軸に合う職場を探すことが大事です。まずは目の前の不満を整理し、その先にある「これからどう働きたいか」を言葉にしてみてください。そこが固まれば、転職はずっとぶれにくくなります。