デイサービスの離職率は高い?【元管理者が現場経験から解説】

目次

デイサービスや介護業界は本当に離職率が高いのか

デイサービスに限らず、介護業界は「離職率が高い仕事」というイメージを持たれることが多いと思います。実際にそう感じている方も多いのではないでしょうか。

介護業界の離職率データの実態

しかし、実際のデータを見ると少し違った見え方になります。介護労働安定センターの介護労働実態調査などでは、施設形態にもよりますが、介護職の離職率は、おおよそ12%〜14%程度となっています。この数字は全産業の平均と比べても、特に高い水準ではありません。

つまり、「介護=離職率が高い」というイメージは、現在の実態とは少しズレている部分があるということになります。少なくとも、データ上は極端に離職が多い業界ではありません。

デイサービスは施設系より離職率が低い理由

その中でもデイサービスは、施設系の介護職と比較すると離職率がやや低い傾向にあります。夜勤がない、日曜日が休みになりやすいなど、生活リズムを整えやすい勤務条件が影響していると考えられます。

参考データ: 公益財団法人 介護労働安定センター「介護労働実態調査」

現場で感じる「長く働ける職場」としてのデイサービス

実際の現場を見ていても、「介護業界だからすぐ辞める」という感覚はあまりありません。むしろ、長く働いている職員は多いです。

実際に長く働く職員が多い現場感覚

私自身、これまでの職歴の中で一番長く勤めた会社は3年でしたが、介護業界では15年働くことができています。この経験から考えても、「介護は離職率が高いから続かない仕事」というよりも、「環境が良ければ長く続けられる仕事」だと感じています。

夜勤がない働き方が継続しやすさにつながる

特にデイサービスは、働き方の面で無理が少ないため、生活とのバランスが取りやすい職場です。夜勤がないという点は想像以上に大きく、不規則な生活が続かないだけでも身体的・精神的な負担は大きく変わります。

また、結婚や出産をきっかけに施設系からデイサービスへ移る職員も多く見てきました。特に女性スタッフにおいては、そのような働き方の変化は現実的な選択肢になっています。そういった背景もあり、施設系と比較するとデイサービスのほうが離職率は低くなりやすいと感じています。

離職理由は本当に人間関係なのかという違和感

介護職の離職理由としてよく挙げられるのが「人間関係」です。実際、前職を辞めた理由として最も多いのが人間関係というデータもあり、しかも年々増加傾向にあります。

人間関係が原因という統計の増加

この結果だけを見ると、「やはり人間関係が原因で辞める人が多いのではないか」と感じるかもしれません。

現場から見た統計への違和感

ただ、現場を見ている立場からすると、この結果をそのまま受け取ることには違和感があります。確かに人間関係が原因で辞めるケースはありますが、それだけで片付けてしまうのは少し違うと感じています。

そもそもこのような統計は、現場の実態をそのまま反映しているとは限りません。どういう背景でその回答が出ているのか、どういう意図で選択されているのかによって意味合いは大きく変わります。

同じように、「理念や運営方針に不満があった」という理由も上位に入っていますが、これも単純にそのまま受け取るべきではないと感じています。実際の現場では、もっと複雑な理由が絡み合っていることが多いです。

このあたりの統計の見方については、別の機会でしっかり説明したいと思いますが、少なくとも「人間関係が原因だから辞める人が多い」と単純化するのは危険だと感じています。

離職が起きやすいタイミングと現場のリアル

離職が発生するタイミングには、ある程度の傾向があります。特に多いのが「採用から1年未満」です。しかし、それとは別によく言われる「3日・3か月・3年の法則」というものもあります。

元は芸事や修行の心構えから来ている言葉で、「三日我慢すれば三ヶ月は耐えられる。三ヶ月耐えられれば三年は頑張れる。」という意味のようですが、実際に介護の現場でも見られます。

入職後すぐに辞めるケース(3日)

まず3日ですが、これは「思っていた仕事と違った」という理由で早期に辞めるケースです。実際、入ってすぐに違和感を感じて辞める人は一定数います。

試用期間後に辞めるケース(3ヶ月)

次に3ヶ月ですが、これは試用期間が関係しているケースが多いです。私の事業所でも試用期間を3ヶ月に設定していましたが、この期間を終えたタイミングで「やはり合わなかった」と退職する職員がいました。

資格取得後に辞めるケース(3年)

そして3年です。介護業界では、介護福祉士の受験資格として実務経験3年が必要になります。この3年を一区切りとして考える職員は実際に存在し、「資格を取ったからステップアップの為、転職する」という選択をする人もいました。

このように、離職にはタイミングごとの理由があり、単純に「辞めやすい仕事」とは言い切れない現実があります。

離職を防ぐ施策の現実と賃金問題

現在、介護業界では離職を防ぐためのさまざまな取り組みが行われています。ICTの導入による業務効率化、介護ソフトによる記録業務の負担軽減、メンター制度による新人フォロー、キャリアパスの整備などが代表的です。

ICTや制度による改善の限界

これらは確かに業務負担の軽減にはつながりますし、働きやすさの改善という意味では一定の効果があります。ただ、現場で見ている限り、離職率を大きく改善する決定的な要因にはなりきれていないと感じています。

離職に最も影響するのは賃金

やはり一番大きいのは「待遇」、特に賃金の問題です。介護事業の収入は、基本的に介護報酬に依存しています。そしてこの報酬は基本的に3年に一度の法改正で見直される仕組みです。

しかし、2024年の改正ではデイサービスの基本報酬は1%以下の増加にとどまっています。この状況では、現場で働く職員の給与が大きく上がることは難しいのが現実ですし、職場の備品など、環境にも予算を組めないという事になります。

どれだけ現場で努力しても、それが待遇として返ってこない状況では、離職を防ぐのは限界があります。ここが改善されない限り、本質的な離職率の低下は難しいと感じています。

処遇改善による賃金の下支えと離職率への影響

しかし近年は、介護職員の処遇改善などの補助金が行政から支給されるようになり、それらが賃金の下支えになっているのも事実です。こうした制度によって、以前と比べると待遇面での不満が軽減されている側面もあり、結果として離職率の低下につながっている要因の一つとも考えられます。

離職率ではなく「職場環境」で判断すべき

デイサービスや介護業界の離職率については、「高い」というイメージが先行していますが、実際のデータや現場の感覚を見ると、必ずしもそうとは言えません。

むしろ重要なのは、「その職場がどうか」です。同じデイサービスでも、職場環境によって働きやすさは大きく変わります。人間関係、運営方針、評価制度、そして給与、これらが整っている職場であれば長く働くことは十分可能です。

逆に言えば、環境が合わない職場で無理に続ける必要はありません。離職率という数字だけで業界を判断するのではなく、自分に合った職場かどうかを見極めることが大切です。

実際、現場を見てきた中でも「職場を変えたことで働きやすくなった」というケースは多くあります。デイサービスという仕事自体に魅力がないわけではなく、その職場が合っていなかっただけということも少なくありません。

無理をして続けるのではなく、環境を見直し、必要であれば転職という選択肢を持つことも、長く働くためには重要だと思います。

この記事を書いた人

デイサービス歴15年。現場から経営・採用まで幅広く経験してきました!
100名以上の面接実績を活かし、現場の本音や転職に役立つ知見を発信中。
「チームで支える介護」の魅力を広め、皆さんの心強い味方を目指します!

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