デイサービスで働いてみたいと思っても、「自分は向いているのだろうか」と不安になる人は多いと思います。介護の仕事と聞くと、優しい人、世話好きな人、コミュニケーションが得意な人でなければ続かないように感じるかもしれません。
たしかに、デイサービスでは人と関わる力が大切です。ただ、現場で長く働いてきた立場から言うと、最初から「自分は介護に向いている」と思っていた人ばかりが続いているわけではありません。働いてみて初めて、自分の中にある適性に気づく人もいます。
この記事では、介護職員、相談員、管理者、採用担当としてデイサービスに関わってきた経験をもとに、デイサービスに向いている人の特徴を現場目線で書いていきます。自分に当てはまる部分があるかを確認しながら読んでみてください。

人との関わりを仕事の力にできる
デイサービスでは、利用者本人だけでなく、家族、ケアマネージャー、一緒に働く職員など、多くの人と関わります。その中で、人の役に立つことや感謝されることを前向きに受け取れる人、相手の立場になって考えられる人は、デイサービスの仕事に向いています。

人の役に立つことや感謝されることにやりがいを感じる人
デイサービスでは、利用者の笑顔や「ありがとう」という言葉に触れる機会が多くあります。自分の関わりで誰かが喜んでくれたことを素直にうれしいと思える人は、この仕事に向いています。
感謝の言葉をくれるのは、利用者だけではありません。認知症などで本人から言葉が出なくても、家族から「本当に助かっています」と言われることがあります。家族の介護負担を軽くし、その生活を支えているのもデイサービスの大切な役割です。
ケアマネージャーや一緒に働く職員から「助かった」と声をかけられることもあります。利用者だけでなく、その家族や周囲の人の役に立つことに喜びを感じられる人は、デイサービスに向いています。
相手の立場になって考えられる人
デイサービスでは、相手の立場になって考えられることも大切です。ここでいう相手は、利用者だけではありません。利用者家族、職場のスタッフ、ケアマネージャーなど、デイサービスを取り巻く人たちも含まれます。
利用者に対しては、発言や行動の背景まで考えることが必要になります。わがままに見える言動にも、不安や疲れ、家族への遠慮が隠れていることがあります。
家族に対しても同じです。自宅で介護負担を抱えていることもあります。職員同士でも、周りが困っていないか、手が足りていない場所はないかに気づけるなど、相手の状況を考えて関われる人はデイサービスに向いています。
その場の状況を見ながら動ける
デイサービスは、一日の流れがある程度決まっている仕事です。ただ、実際の現場では予定通りに進まないことも多くあります。利用者の体調や気分、職員の動き、フロア全体の状況を見ながら動ける人は、現場で力を発揮しやすいです。

予定通りに進まない状況でも柔軟に対応できる人
デイサービスに向いている人は、予定通りに進まない状況でも柔軟に対応できる人です。予定していた入浴の順番が変わることもありますし、利用者の体調によってレクリエーションの内容を変えなければならないこともあります。
外出レクリエーションを予定していても、当日の利用者の状態や天候、職員体制によって中止や変更になることがあります。その時に、予定していたからと無理に進めようとすると、事故やトラブルにつながる可能性があります。
デイサービスでは、予定を守ることも大切ですが、それ以上にその日の利用者の状態に合わせることが大切です。決められた流れにこだわりすぎず、現場の状況を見ながら動ける人は働きやすいと思います。
利用者や職員の様子を広く見て判断できる人
デイサービスは、訪問介護のように一対一で利用者を支援する場面ばかりではありません。一人の職員が複数の利用者を見ながら動くことが多い職場です。そのため、目の前の利用者だけでなく、周囲の状況を広く見る力が必要になります。
たとえば、フロアで一人の利用者と話している時でも、少し離れた場所で立ち上がろうとしている利用者がいれば気づく必要があります。転倒リスクのある方が動き始めた時に、早めに声をかけられるかどうかで事故を防げることもあります。
これは利用者に限った話ではありません。排泄介助が重なって職員が困っている、入浴後の対応で手が足りていない、送迎前に準備が遅れている。そうした職員側の状況にも気づける人は、現場でとても助かります。
デイサービスでは、自分の担当だけを見ていればいいわけではありません。利用者と職員の両方を見ながら、今どこに手が必要かを判断できる人は、現場で信頼される存在になります。
利用者と自然にコミュニケーションを取れる
デイサービスでは、身体介助だけでなく、会話、体操、レクリエーションなど、利用者と関わる時間も大切な仕事です。無理に盛り上げようとするだけでなく、利用者が安心して過ごせる時間を作れる人は、デイサービスの現場に合いやすいです。

人前で体操やレクリエーションを進行できる人
デイサービスでは、職員が利用者の前に立って体操やレクリエーションを進行する場面があります。人前で話すことや、みんなの前で体を動かすことが苦手な人にとっては、最初は恥ずかしく感じるかもしれません。
実際の現場でも、レクリエーションを苦手に感じている職員は一定数います。人前に立って何かを行うことに抵抗がある人もいますし、「うまく盛り上げられない」と不安に感じる人もいます。
レクリエーションでは、職員が利用者を引っ張る役割になることが多くあります。大きな声で説明したり、参加しやすい雰囲気を作ったり、利用者の反応を見ながら進行したりする必要があります。
人前に立つことに強い抵抗がなく、利用者と一緒に動ける人は、デイサービスで力を発揮しやすいです。最初から上手である必要はありませんが、恥ずかしがりすぎずに前に出られることは、現場では大きな強みになります。
話し上手よりも聞き上手になれる人
デイサービスでは、利用者との会話も大切な仕事です。職員と話すことを楽しみにしている方や、家ではあまり話す相手がいない方にとって、デイサービスでの会話が楽しみになっていることもあります。
ここで大切なのは、必ずしも話し上手である必要はないということです。自分が一方的に話すよりも、利用者の話をしっかり聞ける人の方が向いている場面は多くあります。
コミュニケーション能力が高い人はデイサービスに向いています。特に大切なのは、相手の話を受け止める力です。話を途中で切らずに聞き、表情を見ながら反応し、自然に話を引き出せる人は、利用者との信頼関係を作りやすくなります。
デイサービスの会話は、職員が面白い話をする場ではありません。利用者が安心して話せる時間を作ることが大切です。相手の話を聞き、利用者が話しやすい空気を作れる人は、デイサービスに向いています。
必要なことをきちんと聞き、伝えられる
介護の現場では、分からないことを曖昧にしたまま動くと、利用者の安全に関わることがあります。また、優しさだけで何でもやってあげるのではなく、必要な場面では本人のために線を引く判断も必要です。

分からないことを分かったふりせず確認できる人
介護の現場では、「昨日、自宅で転倒した」「薬が変わった」など、利用者の状態や生活に関する情報を申し送りで受けることがあります。こうした情報は、その後の対応にも関わる大切な内容です。
忙しい中で曖昧なまま聞き流したり、分かっていないのに分かったふりをしたりすると、判断を誤って事故につながることがあります。介護では、知ったかぶりをする方が危険です。
分からないことをそのままにせず、必要なことをきちんと確認できる人は、利用者の安全を守るうえでも大切です。分かったふりで流さず、しっかり聞ける人はデイサービスに向いています。
相手のために必要なことを伝えられる人
デイサービスでは、相手のために必要なことをきちんと伝えられることも大切です。利用者が自分でできることまで手伝うのではなく、「ここはご自身でやってみましょう」と声をかけることも介護の一つです。
できることを続けてもらうことは、本人の力を使う機会を守ることにもつながります。優しく接するだけではなく、その人のために必要だと思ったことをきちんと伝えられることが大切です。これは職員同士でも同じです。
困っている職員をフォローする一方で、間違っていることや覚えてほしいことは、なあなあにせず伝える必要があります。相手のことを考えたうえで必要なことを伝えられる人は、デイサービスに向いています。
デイサービスの働き方が合う
デイサービスは、一人で完結する仕事ではなく、職員同士が協力しながら利用者を支える仕事です。また、日勤帯を中心に働く事業所が多いことも、ほかの介護施設とは違う特徴の一つです。
こういうデイサービス特有の働き方に合う人は、数ある介護職の中でもデイサービスに向いています。

時間に制約があっても介護の仕事をしたい人
デイサービスは、日勤帯のみで働ける職場が多いことも特徴です。夜勤が難しい人や、小さな子どもがいる人など、働ける時間に制約がある人でも介護の仕事に関わりやすい環境があります。
実際に、デイサービスではパート職員として働く人も多くいます。夕方までしか働けないなど、限られた時間の中で仕事をしたい人にも選びやすい働き方です。
介護の仕事をしたいけれど、夜勤や長時間勤務が難しい。そういう人にとっては、数ある介護職の中でもデイサービスが向いています。
困ったときにお互いに助け合える人
デイサービスは、比較的少ない人数で一日の業務を回している事業所も多くあります。そのため、一人が急に休むと、どうしても周りの職員に負担がかかることがあります。
そんな時に、休みの職員へ出勤を強いるのではなく、出られる人が無理のない範囲で協力できると現場は助かります。普段からお互いにフォローし合える関係があることも、チームで働くうえでは大切です。
自分や家族の事情で、今度は自分が急に休まなければならないこともあります。助ける側と助けられる側の両方を理解し、困ったときにお互いに支え合える人はデイサービスに向いています。
未経験から介護を始めたい人にはデイサービスが向いている
デイサービスは、未経験から介護を始めたい人にとっても選択肢になりやすい職場です。最初から介護技術に自信がある人だけでなく、高齢者との関わりを学びながら、少しずつ現場に慣れていきたい人にも向いています。
未経験から介護職を始める場合、どの職場を選ぶかで感じ方は大きく変わります。介護の仕事にはさまざまな種類があり、入所系の施設とデイサービスでは求められる動き方も違います。

高齢者との関わりを学びながら始めやすい
デイサービスでは、まず高齢者と関わること、会話をすること、日中の生活を支えることから仕事を覚えていきやすい面があります。身体介護だけではなく、利用者の表情や気持ち、生活背景を見ることも大切な仕事です。
未経験の人にとって、いきなり重い身体介護ばかりを求められると不安が大きくなります。その点、デイサービスでは、利用者との関わりの中で介護の基本を学んでいきやすい場面があります。
もちろん、デイサービスにも入浴介助や排泄介助、移動の支援などはあります。決して簡単な仕事という意味ではありません。それでも、高齢者と関わる経験を積みながら、少しずつ現場に慣れていける職場ではあると思います。
介護技術に不安がある人でも挑戦しやすい
入所系の施設では、介護度が高い利用者の移乗介助や夜間対応など、介護技術を強く求められる場面が多くあります。介護職を経験している人であれば、入所系の施設で求められる技術の重さは共通して感じる部分があると思います。
その点、デイサービスは、入所系の施設に比べると介護度が低めの利用者が多い職場です。もちろん事業所によって違いはありますが、未経験の人が最初に高齢者との関わり方を学ぶ場所としては、選択肢になりやすい職場です。
介護技術に不安があるからといって、最初から介護職をあきらめる必要はありません。分からないことを確認しながら、利用者との関わりを積み重ねていける人であれば、デイサービスから介護の仕事を始めることは十分考えられます。

働いてみて初めて気づく「向いている」もある
デイサービスに向いている人の特徴を見て、「自分には当てはまらないかもしれない」と感じる人もいると思います。ただ、向き不向きは働く前にすべて分かるものではありません。
現場で働いていると、最初は介護に強い興味があったわけではない人が、働く中で介護の仕事にやりがいを感じるようになることがあります。自分では気づいていなかった一面が、利用者との関わりの中で見えてくることもあります。

働いてみて初めて自分の向き不向きに気づくことがある
僕が実際に見てきた職員の中には、もともと介護の仕事に強い興味があったわけではなく、友人に誘われてデイサービスで働き始めた人がいました。最初から「自分は介護に向いている」と思っていたわけではありません。
ところが、その職員は働くうちに介護の仕事にはまっていきました。利用者や利用者家族から感謝されることが嬉しくなり、仕事への見方が変わっていったのです。
本人も「まさか自分が介護の仕事に向いているなんて思わなかった」と話していました。働いてみて初めて、自分にはこういう一面があったのだと気づいたのだと思います。
今では、その職員は介護福祉士の資格を取るために、働きながらスクールに通っています。最初から介護に強い思いがあったわけではなくても、現場での経験を通して仕事にやりがいを感じるようになった例です。
人の笑顔や感謝をうれしいと思える人はデイサービスに向いている
デイサービスに向いているかどうかは、能力だけで決まるものではありません。人前で話すのが得意でなくても聞き上手として信頼される人もいますし、介護技術に不安があっても現場で身につけていくことはできます。
それよりも、人の笑顔を見てうれしいと思えることや、誰かの役に立つことにやりがいを感じられることも大切です。デイサービスでは、利用者だけでなく家族や職員、ケアマネージャーなどから直接感謝される場面があります。
介護の仕事に少しでも興味があるなら、「自分には向いていないかもしれない」と最初から決めつける必要はありません。実際に働いてみて、人に喜んでもらえることが自分のやりがいになると気づくこともあります。
向いているかどうかは、働く前には分からない部分もあります。興味があるなら一度挑戦してみることで、それまで気づかなかった自分の適性が見つかるかもしれません。


